ソーシャルメディアネットワーク(SNS)にとって2018年は、大きな転換期とも呼べる年になった。その象徴的な出来事は3月に起こっていた。Facebookが収集したユーザーデータの一部が、英ケンブリッジアナリティカを通じて政治的に利用されていた事実が明らかになった事件だ。

 この事件をきっかけとして、ユーザーはSNSとそこでやり取りされる個人データの扱いに対して意識を高く持つようになった。Facebookは傘下のInstagramを含めて他のサービスと連係する「API(Application Programming Interface)」の大掛かりな仕様変更に踏み切ったが、この動きはユーザーの意識変化に対応したものと考えられている。

 しかしケンブリッジアナリティカのニュース以降も、現在に至るまでFacebookからの度重なる情報流出が発覚している。2018年12月には、Facebookが150以上の企業と個人に関するデータを共有していた事実も発覚した。

 個人データの扱いだけではなく「フェイクニュース」も、ソーシャルメディアの大きな課題として残っている。ドイツでは2018年1月に「ソーシャルネットワークにおける法執行の改善に関する法律」(通称「ネットワーク執行法」)の運用を開始した。ソーシャルメディアプラットフォーム事業者に、フェイクニュースやヘイトスピーチに対して適切な処理と対応を義務付ける法律である。

 2018年4月には、欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会(EC)が、フェイクニュース対策のための最終報告書を公開した。これを受け、これまで“フェイクニュースの温床”と揶揄(やゆ)されていたソーシャルメディアプラットフォーム事業者が、対策強化を余儀なくされる状況となった

 個人データの扱いやフェイクニュースに加えて、「フェイクインフルエンサー」の存在も大きな問題になっている。これはInstagramが広く利用され、マーケティング活動で周囲に影響を与える「インフルエンサー」を無視できなくなる中で出現した“インフルエンサーをかたる人物”のことだ。“購入した立場”をとってその商品やサービスをフォローしているが、その実態は不透明で、この存在がかつてTwitterで問題視されていた。

 既に人工知能(AI)を活用し、偽フォロワーや偽「いいね!」を見分けようとする仕組みが出てきている。今後はフェイクニュースと同様に、フェイクインフルエンサーを排除しようとする事業者が現れるかもしれない。だまそうとする側とそれを見つけようとする側とのいたちごっこが今後も続くだろう。

 これら個人データやフェイクに関する問題が大きな要因と考えられるが、消費者がSNSから距離を置きつつある状況も見えてきた。これこそが“転換期”を象徴する現象だろう。

 米調査会社GlobalWebIndexが、2019年を展望して2018年末に発表した『Trends 19』というレポートがその傾向を指摘している(編集部注:レポートは個人情報の登録後に閲覧可能)。これによると「米国と英国のインターネットユーザーのミレニアル世代とその下のZ世代を中心に、日常でソーシャルメディアに接触する時間を『前年よりも意識して短くする』と回答した消費者が増加している」というのだ。

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