米PricewaterhouseCoopers(PwC)は,欧州と米国を拠点とする多国籍企業のコンプライアンス(法令順守)に対する支出を調査した結果を英国時間11月23日に発表した。調査対象となった多国籍企業の半数以上(51%)は,この先12~24ヶ月に法令順守に関連する支出を平均23%増加させると答えている。

 かなり大きな幅で支出が増加すると予測されているが,上級管理者の44%は,企業が法令順守に関する支出全体に対して明確な計画を持っていないと考えている。55%は,自分の会社は明確な計画を持っていると回答している。しかし,明確な計画を持っていると答えた大部分の企業は,改善コスト,違約金,罰金,トラッキング時の売り上げの損失,管理時間の損失を考慮に入れていない。

 「企業は,認識している以上に法令順守と能率を改善するために巨額を投じている。しかし,幹部社員は投資に対して期待した結果を得ていないと感じている。非効率的な法令順守プログラムを運用している企業にとって,そのリスクは大きすぎる」(PwC社 Performance Improvement部門グローバル・リーダーのDan DiFilippo氏)

 幹部社員の59%は,自社の法令順守プログラムが「やや非能率的である」としており,合理化できる面があると認めている。5%はプログラムが非能率的であり,企業は必要以上にそのプログラムに経費を使っているとしている。自社のプログラムが「非常に能率的である」と考えているのは32%だけだった。

 米国と欧州の多国籍企業の49%は,自社の法令順守プログラムは改善する必要があると考えている。52%は,法令順守に対する支出から企業が受けている価値を明確に理解していない。

 この先12~24ヶ月の間に,ほぼすべての回答者(90%)は,法令順守に対する取り組みの改善を計画している。これには,リスク管理の改善,法令順守コストを削減するためのプログラム強化,コスト効率の合理化が含まれる。全体として,すべての回答者が同期間中に平均9.9%の支出増加を予定している。

 また,26%の企業は法令順守に対する取り組みの有効性を測定する正式な手段を備えていないことが明らかになった。59%は定期的な監査と見直しに頼っており,主要パフォーマンスの指標を利用しているのは27%だけだった。

 米国ベースの多国籍企業は,欧州の多国籍企業よりも外部要件への支出が高く,米国の84%に対し欧州は61%だった。欧州の多国籍企業では,倫理,コンダクト・コード,リスク管理規則を含む内部の法令順守に対する支出が米国よりも高く,欧州の39%に対し米国は16%だった。米国では,Sarbanes-Oxley Act(米企業改革法)への順守に対する支出が54%を占めている。欧州ではこの割合が12%だった。

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