「850万人近くの携帯電話ユーザーが,番号ポータビリティ制度(LNP:local number portability)を利用して電話番号を変えずに通信事業者の切り替えを行なった」。米連邦通信委員会(FCC)が,同制度が施行されてからちょうど1年を迎えた11月24日に明らかにした。

 同制度は,同一地域であれば,固定電話でも携帯電話でも電話番号は変えずに携帯電話事業者間,または固定電話事業者と携帯電話事業者の間で電話事業者の切り替えを可能にするもの。同制度により,携帯電話サービスと固定電話と携帯電話サービス間における競争の障害が取り除かれた。

 同制度の施行以前は,携帯電話事業者を変えたいユーザーは,新しい携帯電話事業者から与えられる新しい電話番号を利用しなければならなかった。これは,通信事業者の切り替えに対して大きな抑制力となっており,多くのユーザーが競合企業のより安い料金プランに乗り換えるのを控えていた。LNP制度により,電話番号が変更になる不都合が無くなった。

 FCCによれば,前年の11月24日以来,850万人が同制度を利用している。その内の10%弱は,固定電話から携帯電話に切り替えている。携帯電話向けのLNP制度が施行されて以来,電話事業者の乗り換えを行なった携帯電話ユーザーの数は,97年に固定電話向けのLNP制度が施行されてから1年間に電話事業者を切り替えたユーザーの倍以上に達している。

 また,同期間中,固定電話間の業者切り替えは73万2000件だった。携帯電話から家庭またはオフィスの固定電話への切り替えも9000件あった。

 業界のガイドラインによれば,新しい電話事業者への切り替えを望むユーザーは,現在利用している携帯電話の請求書を新しい電話事業者に持っていけば2時間半ほどで手続きが完了するという。固定電話事業者から,または固定通話事業者への切り替えには数日を要するという。

 米メディアの報道(Mobile Pipeline)によると,通信事業者は同制度によって獲得,損失したユーザー数を明らかにしていないが,米Verizon Wirelessと米T-Mobile USAがもっとも多くの顧客を獲得したと推測している。Verizon Wireless社の加入者数は,同制度施行前の3600万人が9月末の時点で4200万人にまで増加している。T-Mobile社は,1210万人だったのが9月末までに420万人増の1630万人に達している。

 もっとも失った顧客数が多かったのは,先ごろ米Cingular Wirelessに買収された米AT&T Wireless Servicesだったとみられる。AT&T Wireless社は,同制度の施行に向けてコンピュータのアップグレードにより顧客サービスと販売努力の強化を狙っていたが,深刻な故障により2003年11月の数週間,新規顧客へのサービス対応ができない状態に陥っていた。

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