電力とオートメーション技術を手がけるスイスのABBと米IBMは,今後10年間にわたる11億ドル規模のアウトソーシング契約を締結した。両社が米国時間7月28日に明らかにしたもの。ABB社は情報システム・インフラの90%をIBM社に委託するほか,同社の従業員1200人以上をIBM社に移管する。

 ABB社は,公益事業や工業企業を対象に,環境への影響が少ない発電技術やオートメーション技術を提供している。IBM社とはすでに提携関係にあり,2001年第4四半期には約6億ドル規模の試験的なアウトソーシング契約を結んでいる。ABB社は今回の契約を「工業分野に向けた当社の中核事業に専念し,コストを削減するためのもの」と説明する。

 IBM社のIBM Global Services部門が,欧州と北米14カ国におけるABB社の情報システムを請け負う。具体的には,サーバー,OS,企業ネットワーク,パソコンなどの管理やヘルプデスクを担当する。

 スウェーデンとインドを対象とした試験的なアウトソーシングでは,既にABB社の社員510人がIBM社に移管されており,今回の契約で新たに約780人がIBM社に移る。IBM社への業務委託の大半は2003年9月に始まる予定。

 IBM社Global Services EMEA部門担当ジェネラル・マネージャのDominique Cerutti氏は,「ABB社は,当社と提携することで自社のITインフラを刷新できるほか,当社の工業分野に関する研究やコンサルティングといったノウハウを有効活用し,市場で長期にわたって優位に立つことができる」と述べた。

 なお米メディア(InfoWorld)が伝えるところによると,IBM社は第3四半期に入ってからすでにいくつかのアウトソーシング契約を獲得しており,その総額は約30億ドルに達するという。

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