米保守系の非営利団体National Legal and Policy Center(NLPC)によると,米New York Times紙や米Washington Post紙などの大手新聞の報道では,米MCIは米国務省などの政府機関の音声トラフィックをカナダ経由で迂回させて,電話サービス・プロバイダへの一部支払いをごまかした疑いで当局の調査を受けている。MCI社がこの「Canadian Gateway」計画で横領した金額は数十億ドルにのぼるという。

 MCI社は米国時間7月28日に,「米連邦検察局と話し合い,調査の本質を理解し,全力で協力することを約束した」(同社会長兼CEOのMichael D. Capellas氏)ことを明らかにし,調査については認めた。

 しかし同社は7月29日,法律会社の米Gibson, Dunn & Crutcherを通じて,各紙で報道されているCanadian Gateway疑惑を否定する声明を発表した。「当社は米政府の通話を保障し,適切に処理している。専用の接続方法と暗号化技術により,MCI社ネットワーク上で米政府の通話のセキュリティを確保している」(MCI社Government Markets部門上級バイス・プレジデントのJerry Edgerton氏)

 また,MCI社Operations & Technology部門プレジデントのFred Briggs氏は,「当社のトラフィックの約8%は最適回線自動選択(LCR:Least Cost Routing)機能で処理されている。LCR機能では,10年以上の実績を持つ企業が安い回線を合法的に提供している」と説明した。

 NLPCはこの疑惑に対して7月27日にコメントを発表している。「MCI社が競合他社から数十億ドルを搾取したことも問題だが,それより,国家のセキュリティを危険にさらしたかもしれないことが重大だ。米議会と米共通役務庁は,特に米国務省の通話が確かに米国外の経路をたどったのかどうか,ただちに調査に乗り出すべきだ」(NLPC議長のKen Boehm氏)

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[発表資料(MCI社のプレス・リリース1)]
[発表資料(MCI社のプレス・リリース2)]
[発表資料(NLPCのプレス・リリース)]