米Silicon Graphics社(SGI)は外科手術における遠隔ビジュアライゼーションに関する発表を米国時間9月5日に行った。同社によれば,英Manchester Royal Infirmaryの医師が,4月に手術室に標準的なラップトップ・コンピュータを持ち込み,複雑で3次元の患者の臓器のイメージを投射して手術を行った。その結果,癌性腫瘍の摘出などの手術では3次元ビジュアライゼーションが成功率を高める可能性を示しているという。

 イメージは腫瘍の境界を正確に示した。このイメージ生成に必要とされる膨大な処理能力は,ラップトップではなく,手術室から1マイル以上離れた大学のスーパーコンピューティング・センターに格納されるSilicon GraphicsのOnyx2ビジュアライゼーション・システムとInfiniteRealityグラフィックスが提供する。外科医は,患者の臓器の3次元画像をネットワークを介して転送して,標準的なコンピュータによりイメージを手術室の壁に投射した。

 「腫瘍自体にメスを入れないことは重要だが,現在外科で使われている平面の2次元スキャンでは,3次元の深みを正確に推測するのは困難だった。SGIの技術とManchester Visualisation Centreが作成したビジュアライゼーション・ソフトにより,手術室でラップトップ・マシン上で複雑な3次元のスキャンを見られるようになった。摘出を試みる前に腫瘍の境界が分かるようになった。このような手術室における3次元ビジュアライゼーションが一般的になる日が訪れるだろう」(手術を執刀したUniversity of ManchesterのRory McCloy氏)

 SGIの「Visual Area Networking」は,ツール・セットを定義するもの。コンピュータ・ユーザーは,リモートにあるSGIビジュアライゼーション・サーバーで作成,ホストされる複雑でグラフィカルなイメージにアクセスして操作することができる。病院は広域に渡り手術室にインタラクティブなビジュアライゼーションを届けることができる。

 同技術は,同社の「OpenGL Vizserver」コンピューティング・ソリューションを使って標準的なネットワーク・リンクを介してサーバーからクライアントに解析されたデータを転送する。OpenGL Vizserverは,ラップトップ,ワークステーションを含むどのようなクライアントでも機能する。

 また,OpenGL Vizserverは,ネットワーク化されたコラボレーションをサポートため,複数のネットワーク・セッションで同一イメージの表示と操作ができる。たとえば,外科医は,遠隔の同僚とリアルタイムで同一の患者データを見ながら,最善の方法を相談できる。

 Manchesterチームは,ビジュアライゼーション・グリッドの開発でSGIとコラボレーション関係に入った。プロジェクトでは,OpenGL VizserverとGlobus Toolkitを統合し,リモートのビジュアライゼーションのサポートとグリッドでの安全なデータ転送の提供を狙う。

◎関連記事
米SGIが「Visual Area Networking」構想をデモ
スーパーコンピュータによるCGを様々な機器で表示させる構想を米SGIが発表
米SGIがNASAのスーパーコンピュータをアップグレード,「演算速度が37%向上し,1228.80GFLOPSに」
米SGIが2002年4~6月期業績を下方修正,「IT支出の低迷で販売サイクルの予測が困難」

「視覚シミュレーション世界市場は2007年に現在の2.3倍」と米社の調査

発表資料へ