米IBMが米国時間5月21日に,ハード・ディスク装置(HDD)の面記録密度を4倍高める磁気コーティング技術を開発したことを明らかにした。IBM社が開発したのは「AFC(antiferromagnetically‐coupled」と呼ぶハード・ディスク技術である。
AFCと呼ぶハード・ディスクは,プラチナに近い貴金属「ルテニウム(ruthenium)」の原子2~3個から成る超薄層「pixie dust」を磁気層ではさむ3層コーティングの構造をもつ(写真上,写真下は従来構造)。
この技術を用いて,2003年までに1平方インチ当たり100Gビットの記録密度を達成できると,IBM社ではみている。
HDDの記録密度はかつて18カ月に2倍のペースで高密度化してきたが,1997年からは12カ月で2倍とスピードアップしている。「開発のスピードとしてはLSIにおけるムーアの法則をはるかに上回る」(IBM社)。
「HDDの記録面積が小さくなるにつれて,データ保存の耐性が劣化するという『超常磁性効果(SPE:superparamagnetic effect)』が生じる。つまり磁化の方向を維持できなくなってしまう。こののため,現行技術の面記録密度は最大でも40Gビット/インチ2といわれてきた。。AFC技術はこのカベを打ち破るものとなる」(IBM社Storage Technology部門Advanced Hard Disk Drive Technologyのディレクターで同社Almaden Research CenterのStorage Systems and Technologyのディレクター,Currie Munce氏)。
IBM社は同日,AFCメディア技術を搭載したノート・パソコン向け2.5インチ型HDD「Travelstar」の出荷を始めた。搭載したのは同社が3月末にリリースした容量48Gバイトの「Travelstar 48GH」と30G/20Gバイトの「Travelstar 30GN」,15G/10G/6Gバイトの「Travelstar 15GN」の3品種。 記録密度は最大25.7Gビット/インチ2。
IBM社は今後,全てのHDD製品にAFCメディア技術を搭載していく計画である。アプリケーション別の容量は以下の通り。
デスクトップ機向けHDD:400Gバイト(書籍40万冊分)
ノート・パソコン向けHDD:200Gバイト(DVD42本枚/CD300枚分)
ハンドヘルド機向け1インチ型マイクロドライブ:6Gバイト(MPEG-4の圧縮デジタル
・ビデオ13時間分/映画8本分)
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