米Amazon.comが米国時間2月6日に,ネット・ユーザーがお気に入りのWWWサイトなどに「薄謝」や「チップ」を提供できる組み込みシステム「Amazon Honor System」の提供を始めたことを明らかにした。

 システムには,Amazon.com社の「1-Click」技術を用いた。1-Click技術とは,顧客がWWWサイトで買い物をする際にクレジット・カード情報などを一度登録しておけば,二度目の買い物からはこれらの情報の入力を省略できる技術。ネット・ユーザーが簡単な操作でWWWサイトにちょっとした「謝礼」や「チップ」を提供できるようにする。

 またWWWサイトを運営するオンライン事業者などが,動画や音楽のほか,ニュース,詩,短編小説,解説記事,各種文献といった活字媒体のコンテンツへのアクセスを有料サービスとして提供することもできる。

 「Amazon Honor System」は,どんなWWWサイトにも簡単に組み込めるという。具体的には,WWWページに「Click to pay」もしくは「Click to give」ボタンを加える。ボタンをクリックするとAmazon.comのHonor Systemページに飛び,希望の金額(1ドル以上)を入力する。さらに顧客情報のパスワードを入力して利用するクレジット・カード情報を確認し,トランザクションを完了する。

 Amazon.com社によれば,トランザクション処理にはセキュリティが確保されており,顧客情報などがWWWサイトに提供されることはないという。30日間以内であれば返金も可能。「チップ」を受け取るWWWサイト側はAmazon.com社に対し,トランザクションごとに手数料を支払う。ただし,Honor Systemの導入や登録費用,ネット・ユーザー側の手数料などはすべて無料である。

 サービスの導入手続きなど詳しい情報を,Amazon.com社のWWWサイトで提供している。登録手続きは15分程度で完了できるという。

 「WWWサイトを運営するオンライン事業者などは,コンテンツ・サービスを一層充実させていくために,新たな収入源を確保したいと考えている。とりわけ,幅広い支持を集める人気サイトではその意向が強い。一方で,ネット・ユーザー側にも,よく利用するWWWサイトなどに対し,ファンとして“ほんの気持ち”を提供したいという人が少なくない。Amazon Honor Systemを導入すれば,数秒の手間で双方の橋渡しが実現できる。重要なのは,WWW事業者がその資金でさらにコンテンツをパワーアップしていけるという点だ」(Amazon.com社)。

 Amazon.com社の提携企業など,50社あまりのWWWサイトがすでに同システムを導入しているという。導入した企業の一部は以下の通り。

・AdCritic.com(http://www.adcritic.com/)- 広告関連
・Chank.com(http://www.chank.com/)- フォント・サービス
・Indigenous(http://www.indigenousrocks.com/)- 音楽情報サービス
・Satire Wire(http://www.satirewire.com/) - 政治経済などの風刺コラム
・Seti Institute Online(http://www.seti.org/)- 教育・科学振興団体

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