このページは,「読者96人の意見に答える――『動かないコンピュータとコンサルタント』問題について」と題した記事の第5部です。第1部はこちらのページでお読みください。

11時10分:所用があり,寄り道をしていたため到着が遅れた。作業中の単行本の校正紙を制作部門から受け取ってから自分の机に座る。たまっていた電子メールを片づけ,電話連絡をした。いよいよ再開である。

[2002/11/01] 気持ちを込めて仕事をしよう
 一言では片付けられないとは思いますが,コンサルティング会社・インテグレータ・ソフト会社とも,気持ちをこめた仕事をすれば,動かないコンピュータは少しは減るのではないでしょうか。今までの動かないシリーズを見てみると,どこかでテキトーな仕事をしている会社・人がいるような気がしてなりません。そのテキトーな人がキーマンだった場合に「動かない」になるのでしょうが。コンサルティング会社がかなりやり玉に上がっていますが,読者のコメントを見ると優秀なエンジニアをかかえたコンサルティング会社もいるようです。青臭いかもしれませんが,「使う人に喜んでもらえるシステム作り」が一番大事だと思います。どのレベルの作業でも作り逃げする会社・人がいるために「動かない」になるのでは。

12時52分:これはいわゆるプロフェッショナル責任のテーマであろう。記者でもテキトーな仕事をしている人がいるかもしれない。またまた自戒したい。

[2002/11/01] みんながITを軽視している
 失敗するプロジェクトには必ず原因があります。以下に列挙します。これらは複合しているケースがほとんどです。
・経営がITを軽視している
・業務部門もITを軽視している
・IT部門は業務を知らず,業務部門の御用聞き
・ベンダーはIT部門の指示どおりに構築することしかできない。少なくとも国内大手ベンダはすべてそうである
・コンサルティング会社はここ数年価格競争で負けて,システム構築の修羅場を知る人員が不足する傾向にある
・IT部門がベンダーを選定する能力がなく,コストだけでベンダーを決めたり,付き合いのあるベンダーに無条件で委託す
・ベンダーが提案したことを実現できるスキルや人員が不足することが多い。
  ITがないと業務ができないという現実を直視し,経営も業務部門もIT部門もベンダーもコンサルも,ITに対する意識を正しくもつことが,プロジェクトを成功させることにつながると思います。

12時55分:問題点がわかりやすく整理されている。ただコンサルティング会社のくだりがちょっと分からなかった。あまりにも高いので,実際の開発工程は受注したくてもできず,経験者が不足しているという意味であろうか。

[2002/11/01] 13年たっても何も変わらず
 今から13年前,自分が携わっていたプロジェクトが日経コンピュータの「動かないコンピュータ」に取り上げられました。あれから技術や環境は目まぐるしく進歩したにもかかわらず,未だに“動かないコンピュータ”の多い現実。システムを作るのは人であり,その人々の意識が13年の年月を経ても変わらない日本のソフト業界。なんとか変えて行きたいものです。

13時:ひょっとして筆者が書いたプロジェクトであろうか。先日,ある会合でとなりに座った方に,「昔の動かないコンピュータで,わたしのコメントが載ってしまいました」と言われて驚いたことがあった。筆者が記者になってから18年,まったく何も変わっていない。本当になんとかしたいものである。

[2002/11/01] できるコンサルタントは本当にできる
 確かに,日本のコンサルタントのコストが高いのは同感。彼らの方法論やノウハウを蓄積したデータベースはたいてい,米国からの直輸入である。しかし,この方法論を使っている本国のコンサルタントと一緒に仕事されたことはありますか。ソフトウェア管理からTCO(総所有コスト),ビジネス・プロセス・リエンジニアリング方法論からシステム構築のモジュール化により高い生産性,そして多くのグローバル企業での実績は高く評価できます。コンサルタントへの批評は,国内法人自体の問題としてあるのではないか。とはいえ一緒に仕事した15年前のアンダーセンは国内でも優秀なエンジニアが多かった。

13時5分:確かに方法論やデータベースは重要である。顧客先で作った資料をまたたくまに再利用するのはいかがなものかと思うが。

[2002/11/01] 「数名セットのリサーチ」に注意
 カスタマサポート業界におります。そこでも,某大手コンサルティング会社の社員と何度も接する機会がありました。必ず数名セットで現れては,リサーチを開始します。成果物と言えば,会議の議事録に毛の生えたような嘲笑を隠しえないものばかりでした。日本の外交官の報告書の多くが,現地の新聞の要約ばかりであることとさほど変わらないでしょう。
 また,プロジェクトにかかわってくるコンサルティング会社の社員は,当たり前の理屈だけを述べて,やはり「ちゃんとやってください」のバカの一つ覚えでした。当たり前のことをいかに当たり前にやらせるか,彼らの中で考え実践している人はいませんでした。その他のコンサルタントも多く見てきましたが,内容の伴わないことばかり述べています。社員の中には,コンサルタントの講義中,呆れて眠りかかっている者さえいました。コンサルタントとは一体何を成す人達なのでしょうか?

13時10分:「数名セットのリサーチ」は危険信号のようである。先にも書いたように,何をリサーチするのかを明確にしておかないと,現状の仕事の整理に終わってしまう。

[2002/10/31] コンサルタントを頼む段階で半分アウト
 トップは内部の意見を聞きたがらない。内部の意見は自分に都合の悪い話が出てくるし,話の内容がよく理解できるからである。ところが,コンサルタントの話はよく理解できないし,現実の自分に都合の悪い具体的な話は出てこない。だからコンサルタントの話を聞く。コンサルタントがまともかどうかの判断は,小学生に,「話をしてくれている大学生のお兄さん,お姉さんはいい人かどうか分かる?」と聞いているようなものである。コンサルタントのレベルが判断できるくらいならばコンサルタントを頼まない。コンサルタントを頼もうと考えた時点で,その組織は半分「アウト」だと思う。

13時11分:これは痛烈な指摘である。筆者もすぐ,「経営者が馬鹿」と書いてしまうが,それでも多くの経営者が小学生ではないと思いたい。おそらく,文学部の学生に,「物理の話をしてくれている後輩の理学部生ができる人かどうか分かる?」と聞く感じではないか。これならレベルを判断できないだろうか。

[2002/10/31] 皆で問題意識を共有し前進を
 システム構築の本質的な問題点を痛快に突いたすばらしいコラムだ。今年の記者の眼のベスト・オブ・ザ・イヤーは間違いないだろう。対策に言及されていないというコメントがあるが,それに有効・明確な答えがないからこそ,そこかしこで問題が発生する訳で,本コラムの範疇を超えている。これを皆で問題意識を共有し前進するためのマイルストーンにしたい。

13時30分:日経コンピュータの編集長から電話がかかってきたので,いったん中断してしまった。ご評価ありがとうございます。今回の膨大な書き込みの中に,対策が相当あると思います。

[2002/10/31] 騙されるほうも悪い
 「経営トップが馬鹿だから,プロジェクトに失敗する」・・・笑いながらうなづかせていただきました。個人的にお付き合いは無いですが,コンサルトって評論家だと思っています。言いたいこと言っても結局自分に責任がないので気楽な商売に見えますね。騙されるほうが悪いのでしょうけれど。

13時31分:どうも多くの方の印象に,「経営トップが馬鹿」という表現が残ってしまったようだ。「記者が馬鹿だから」と言われないようにしたい。

[2002/10/31] コンサルタントの仕事に目配りを
 「言うは易く行うは難し」という笑えない話です。しかし,実際のプロジェクトでは開発工程の途中に何度もレビューポイントがあるはずで,そこで軌道修正することは可能です。固定観念にとらわれたり,社内の力関係に翻弄されている社内のシステム部門に抜本的な改革は難しく,いきおい外部コンサルタントの採用となります。ここで要は,コンサルタントの仕事に目配りできる人材が社内に存在するかどうかです。

13時33分:それと社内の力関係を無視して,軌道修正できる人材がいるかどうかであろう。要件定義(議事録作成)だけで10億円以上を使ってしまい,本来なら失敗プロジェクトとして打ち切るべきにもかかわらず,「コンサルティング会社を選定した幹部の責任問題になる」として,同じコンサルティング会社へ仕事を頼み続けている事例が結構ある。

[2002/10/31] 紙の成果物ではシステムを運用できない
 システムを構築する会社にコンサルティングも頼むべきだ。紙の成果物ではシステムは運用できない。ソフトウェアという成果物があって初めて,コンピュータは稼動するし,システムを運用できる。

13時35分:最近は紙の成果物がプレゼンテーション・ソフトの出力結果になっているという恐ろしい話もある。ただし,本当の戦略立案コンサルティングは,システム構築会社には難しいと思う。どうしてもシステムを作りやすい戦略を提言しがちになるからだ。

[2002/10/31]  自分自身で回答を出す
 非常に参考になる内容。問題点をスパッと明快に指摘している。「ではどうすればいいのか」という視点がないとのコメントもありますが,それこそ「自分で方針を決められない経営トップ」と同じレベルな気がします。記者は事実の指摘とそれについてのコメントでいいのではないでしょうか?それについての解答を出していくのは,これを読んでいる自分達自身なのだと思います。

13時37分:ありがとうございます。今後も,「事実の指摘」に邁進します。

[2002/10/31] 零細企業の成功事例を見習う
 莫大な労力と資金の無駄遣いをやめて有効投資できるようになると良いですね。それには零細企業でのシステム成功事例でも見習ってもらうことでしょう。

13時38分:確かに,10億円の利益を上げようと思ったら,どのくらいの売り上げが必要になるかを考えてみると,ぞっとするものがある。にもかかわらず,10億円のコンサルティング費用の支払いが発生している。

[2002/10/31] 読者の投稿は参考になる
 記事の内容そのものは,「ではどうするか」が無いので参考となりにくい内容だが,読者の方々の投稿は非常に参考になる。他を批判する人のなんと多いことか。きっと谷島さんも,「まず批判されるべきは自分自身(とマスコミ)」と言うことは了解しているものと思う。それなら犯人探しをすることの意義はそれほど無いのではないか。自分自身が反省すべき点はないか。それを成功に変えて行くには自分には何が出来るか。改めて考えさせてもらえる良い機会となったと思う。

13時40分:了解しております。

[2002/10/31] 安易に「馬鹿」といわない
 「トップが馬鹿だから」は正しいでしょうが,その下にいる人間もそれ以上に馬鹿ですよね。この例ではシステム部門。トップの意向を汲み取れず,伝言ゲーム以外のことができない人々,早くリストラされていなくなってほしい。皮肉はこのくらいにしておいて,「馬鹿」「馬鹿」っていうのは簡単ですが,世の中,記者が考えているように頭のいい人ばかりではないです。記者みたいに頭のいい人が安易に他人を「馬鹿」というから,本当は自分も「馬鹿」なのに他人を安易に「馬鹿」とおもう評論家気取りが増えて,物事が進まないのでは?「馬鹿」という前に,「馬鹿」なら何をすればよいかを考えたほうがいいのでは?

13時42分:言葉使いには今後注意します。

[2002/10/31] 悪循環をどこから切り崩すか
 内容にはおおかた賛成なのだが,「ではどうしたらいいか?」に欠けると思う。ボンクラなコンサルタント像を浮き彫りにするもよし,インテグレータのお客側がそこに至るまでのインテグレータ側のアホさ加減を燻し出すもよし,お客自身の無知を再認識させるもよし。だが,この悪循環をどこから切り崩すのが一番労力が要らないかの助言が締めくくりにあってこそ,生きてくる記事だと思う。

13時45分:今回の意見の数々を再構築し,解決策(の第一歩)を書いてみたいと思う。

[2002/10/31] 馬鹿に馬鹿といっても冷静に聞かない
 谷島さんが書くと記事も読者コメントも大変面白いですね。「経営トップが馬鹿だから,プロジェクトに失敗する」,その通りです。ただ,谷島さんが気付いてらっしゃらないのは,馬鹿に対して「馬鹿」と言ったらそいつはまず冷静に聞かないだろうということです。実力と自信のない人は,自分への批判を冷静に受け止められないものです。谷島さんには是非そういう人たちの目を覚まさせて頂きたい。それに成功されるとコンサルタントも淘汰されて,悪質なのは減るんじゃないでしょうか。ちなみに私もコンサルタントですが(笑)

13時46分:ご指摘はその通りと思う。筆者は非常に短気なので,厳しく言われると,冷静に聞けないところがある。現在企画している経営者向けの新媒体では,文章を相当工夫する必要があると考えている。

[2002/10/31] 馬鹿ではなく無知では
 ご意見には,大筋賛成です。でも,経営者が「馬鹿だから」じゃなくて,「無知だから」の方が適切かと思います。馬鹿が経営者をしていたらシステム以前の問題で会社がヤバイかも…

13時47分:システムに対して「理解がないから」。理解できないことを部下に「聞こうとしないから」。

[2002/10/31] 現場のSEからも聞いた
 記事にあるようなプロジェクトの実例がいくつもあることを現場のインテグレータのSEから聞いています。よく記事にしてくれました。賛辞を送りたい。

13時49分:恐縮です。

[2002/10/31] 記者は真面目にやれ
 「講演などでは....滅茶苦茶なことを話していた。だが,原稿にするのは難しく,きちんと書いてはいなかった」。原稿にまとまらない話を有償で聞かされる身にもなって欲しい。まとまってから講演してほしい。そしてコンサルタントに対し批判して欲しい。順序が逆でしょう。理論展開が変わってしまった場合の事を考えたことがあるのか?此処に出てくる批判されるべきコンサルタントより非難されるべきだ。

13時49分:誤解を招く文を書いたことをお詫びする。講演で話したのは,記者の眼で書いたとおりの内容である。「原稿にするのは難しく」というのは,論旨がまとまらないという意味ではない。原稿で書くときは実名報道がいいと思ったからである。滅茶苦茶とは,意味不明という意味ではなく,過激な内容というつもりであった。したがって理論展開は今のところ変わっておりません。

[2002/10/31] 数億円の案件を数百万円で解決
 昔いた会社も全く同じでした。流通関係なんて全然わかっていない社長のお気に入りのコンサルタントと言われる人がきて,システム案を作成し・・・。結局全く使用しないプログラムを作成し,去っていきました。出た見積もりが数億円。その後,コンサルタントを外して,システムを開発したら数百万円で要求するものができました。 あの人たちはいったい何だったのだろう。

13時52分:ただし社長のお気に入りという人は,別なことを頼める。直接社長にいいにくいことをうまく言ってもらうのである。

[2002/10/31] 評論家の言いなりは危険
 「コンサルタント」って評論家ですよね。だって,最終的な成果に責任を持っていないんですから。経営評論家の言うとおりに経営して会社がつぶれたら,その経営者は馬鹿といわれるのではないですか。なんで情報システムはコンサルタントの言う通りに作ろうとするのでしょう。過去にこのようなケースで痛い目を何度も見たシステム・インテグレータの社員です。

14時8分:お疲れ様です。経営者とコンサルタントを,いい意味でコントロールできるように,なんとか頑張ってください。

14時9分:締め切りが迫ってきたので,あとどのくらいの意見があるかを確認。もう少しである。

15時:来客。情報セキュリティについて小一時間話をする。

16時:17時30分に外出しなければならないことに気付く。実はこのコンサルタント問題について,日経ビジネスのWebにも原稿を書こうと思っていた。日経ビジネス編集部に聞くと,「16時30分には原稿がほしい」とのこと。IT Pro編集長に相談し,日経ビジネスの原稿を先に書くことにする。

17時30分:ようやく日経ビジネスの原稿が完成。メールで送りつけ,そのまま外出。いわゆる原稿の出し逃げという行為で,もっともやってはいけないこととされている。

25日1時:諸般の事情により,夜中の1時に帰宅。さすがに執筆を再開する気力がなくそのまま寝る。 

9時40分:朝食後,執筆を再開。しかし15分だけやってまだ中断。

17時:ようやく再開。今度こそ一気に終了させたい。ところがほぼ丸一日中断したため,それまで書いたり読んだりした内容を忘れてしまった。そこで冒頭に戻り,読者の意見にそれぞれ見出し(題名)を付けながら再読することにした。

18時:全意見に見出しを付けた。ついでに数えたところ,96本もあった。つまり96人と対話しているわけだ。インターネットが偉大と思える瞬間である。ただし土曜にパソコンに向かっている筆者への家族の目は冷たい。風呂掃除をする。
(続く)

全文は以下のページでご覧ください。
第1部 ~1月24日1時18分
第2部 1月24日1時26分~2時38分
第3部 1月24日2時45分~3時24分
第4部 1月24日8時20分~9時15分
第5部 1月24日11時10分~25日18時(本記事)
第6部 1月25日19時~19時24分
第7部 1月25日22時42分~23時40分

(谷島 宣之=ビズテック局編集委員)