このページは,「読者96人の意見に答える――『動かないコンピュータとコンサルタント』問題について」と題した記事の第4部です。第1部はこちらのページでお読みください。
8時20分:執筆を再開する。6時40分ごろ起きたので,睡眠時間は3時間であった。ファイルをデスクトップ機からノート機に移し,執筆を続ける。次の質問に答える前に,今まで書いた部分を読み直して校正する。
[2002/11/01] 日経一面で報道を
IT Pro編集長,谷島さんお願いです。 日経ビジネスで特集記事 + 日経新聞一面に連載 = 経営者が読みます。 日本経済再生のためにお願いいたします。
8時35分:「経営者に発信を」と言う依頼が多かったので,日経ビジネスのWebサイトで連載している「経営の情識」欄で,IT Pro読者の意見を交え,コンサルタントの話を書いた。さらに今回寄せられた提言のいくつかを,1月27日付の日経ビジネスWebサイトに転載した。
[2002/11/01] なぜ安易に払うのか
この記事を読んで不思議に思った事があります。システム導入時に支払う費用ですが,なぜ検収も終わらないうちに支払うのでしょうか。もし成果物の検収も終わり納得済みで費用を支払ったのであれば,たとえそれが動かないコンピュータであっても,双方文句はないのではないでしょうか。その結果が不満であれば裁判で争えばよいのですが,そのような事例があるのかどうかは記事からはわかりませんでした。業界の慣例がどうなっているのかわかりませんが,着手金は別として成果物が完成する前に代金が頂けるなら,そんなおいしい商売はないと思います。悪意で考えれば,どのような仕事をしても形を整えればよいという事になるので,仕事の質にも関わると思います。もしそれが業界の慣習であるならば,成果物納品後まで代金を一切頂かない業者は,単にお人好しという事でしょうか。
8時36分:通常のソフト開発の場合,検収前に全額を払うことはまずない。ただしコンサルタントという肩書きの人が大量にやってくる「ソフト開発」の場合,成果物がいい加減な議事録であっても,支払ってしまうことが少なくない。少し前に書いたように,コンサルタントから「そういうものだ」と言われると,顧客は泣き寝入りをする。
[2002/11/01] 建造物と情報システムの差
1.たとえば化学プラントや高層ビルのような建造物と,情報システムはどう違うのだろうか。建設分野にもコンサルティングやエンジニアリングの工程があるが,情報システムと同様の問題があるのか?
2.もしそうでもないのだとしたら,情報システム業界特有の問題ということになるが,そうなのか?
3.仮説に過ぎないが,いい加減な仕事をしても金がもらえることが多い業界体質ゆえに,良貨が悪貨を駆逐し得ない,クリティカルに達しない世界なのだろうか。いつまで経っても途中までしか完成しない高層ビルや,スチレンを作ろうとしているのにエチレンが出てくる化学プラントが建設されることが常態であれば,程度の低いエンジニアリング・ゼネコン業者が横行することは考えられるが,建設業界はそれほど酷くない。
4.成果に応じて報酬を払う仕組みができないものか,良貨の量産が期待しにくいだけに,悪貨を駆逐することしか思い浮かばない。
8時41分:乱暴にいうと,プラントやビルは目に見えるが,情報システムは目に見えない。建設分野では,情報システムに比べれば失敗は少ない。コストが見積もりを超えるということはあるかもしれないが,当初設計とまったく違うビルが建ったという話は聞かない。失敗率の高さは,情報システム業界固有と思われる。いい加減な仕事をしても,マジめに仕事をしても,金がもらえた業界体質であった。作業時間で金額を計算するから,そうなるのである。成果報酬方式は,一部の案件で導入されている。
[2002/11/01] 「ちゃんとやって」というのがコンサルタント
「ちゃんとやってください」と言うことがコンサルタントの仕事です。方針に自信の持てない経営者,自己保身しか頭に無い管理職,方針を理解しない現場。どこかに「ちゃんとやらない」人がいるから失敗する。コンサルタントに大枚はたくのは,高尚な理論のためでなく,分厚いレポートのためでもなく,「ちゃんとやれ」の一言に重みを持たせるためだけのこと。コンサルタント,いい商売ですよね。
8時47分:「現場から言ってもトップが聞かないので,コンサルタントに言ってもらう」。こうした話はよく聞く。ただし,本当にいい商売かどうかはよく分からない。コンサルティング会社と上位のコンサルタントにとっては,いい商売である。しかし若手のコンサルタントは,それほど高給ではない。したがって野心のある若手は,一刻もはやく上位のコンサルタントの地位につこうとして,猛烈に働く。その競争ぶりと上位コンサルタントとの親分子分関係に嫌気がさした若手は,別の業種に転職する。
[2002/11/01] 丸投げは経営放棄
この記事の筆者に全く賛成です。経営者が,革新的な何かの願望を持ったとすれば、丸投げでは、必ず失敗する。理念、目標値,方法・手段,評価方法,評価者,各ステップの評価時期,評価者選定などを決めないで経営者が社内の現場に権限委譲したり,外部に委託したら,経営放棄である。各節々の評価会には、経営者も評価者の一員として必ず出席すべきである。それがあって,はじめて経営者の求める目標が達成されると考える。あの銀行合併の情報システムの失敗は、それがなかった。何処(企業)でも、誰(経営者)でも成功への道は、同じである。
8時50分:ご指摘の通り,「理念、目標値,方法・手段,評価方法,評価者,各ステップの評価時期,評価者選定」,これらを最初にきちんと決めるのがプロジェクトを成功させる要諦である。ところで筆者が今やっている新媒体の開発プロジェクトは,理念は非常にはっきりしている。ただし,方法・手段がいささか泥縄である。
[2002/11/01] 公開討論会を望む
経営者,コンサルタント,SEとかで私たちのここが問題,ここが悪いといったディスカッションを開催してみてはいかがでしょうか。他人の批判は一切なしで,自分の立場で問題点を認め合ってみたら面白いし,発見もありそうですね。悪い所自慢は難しいかなあ,日本人には。ただの反省会になっても意味がないので,明確な目的を決めてから行なうべきなんでしょうね。
8時54分:確かに面白い企画である。ITProの記念セミナーでやってはどうだろうか。問題は,パネリストにどなたを選ぶかである。自己批判をふまえ,建設的発言ができる方を探さなければならない。相当考えて選ばないと,ブラックジョークになる危険がある。
[2002/11/01] 頷きながら読んだ
物事の本質をズバリと判り易く書いた,いい記事ですね。何度も頷きながら読ませて頂きました。
8時59分:ありがとうございます。「本質を書いてある」というのは,筆者にとって最高の誉め言葉です。元気が出てきました。
[2002/11/01] 協業が不可欠
すべての協業が必要不可欠であると,改めて感じさせられました。コンサルタント会社の「分厚い資料」,それを読むだけで時間の無駄とも思う。かといって高いお金を払って紙切れ1枚では頼んだほうの経営者も納得しないであろう。でも,本当の肝は1枚の紙でもいいはずだ。また,コンサルティングをしてから,システムを作るまでに,すでに時間がたっている。業務の内容も変わっているだろう。作業をひとつずつ分けて考えるというところにも問題もあるような気がする.
9時:筆者がいろいろ勉強させていただいている,あるコンサルタントは,紙切れ3から4枚程度の提言書しか出さないという。「戦略とか機構改革の提言は,経営者が読んで理解できる分量でないと意味がない。当然,担当するコンサルタントは数人でよい」そうだ。
[2002/11/01] プロジェクトメンバーは専任で
私の会社(製造業)では現在,基幹系システムの全面刷新をすべく,システムを構築中です。導入するパッケージをある程度決め,そのパッケージ・メーカーの人間をコンサルタントとして頼み,仕様決めを進めてきました。自社側の担当者は,システム部門は勿論,ユーザーとなる設計部や製造部などの一線級の担当者を「専任」として抜擢し,要件定義や仕様決めをやらせています。
キーパーソンが本来業務から完全に抜けてしまう穴は大きいですが,そこはトップダウンに決めたようです。 現在も作業は進行中ですが,業務分析などを進めた結果,なんと最初に導入するつもりでいたはずのパッケージの導入を取りやめてしまいました。業界標準ともいえるパッケージであり,導入するものと思い込んでいましたが。思い切った判断をしたものです。 少なくとも私どもの会社の場合,このコラムで例示されているような最悪のシナリオは歩んでいないようで,ちょっと安心しました。
9時1分:現業部門のエースを専任にするのは,プロジェクト成功の基本の一つである。今後も紆余曲折があると思いますが,プロジェクトの成功をお祈りします。
[2002/11/01] 現場の人の言葉でまとめる
経営者が事業ビジョン(あるいはこうありたいというビジネスモデル)を示し,それを実現するために現場でどの様な業務フローで行えば良いかを,現場の人の言葉と考え方でまとめることが最も必要な事である。その部分は現場が一番解っている訳で,コンサルタントにまかせるべきではない。そこでまとめられたものがシステムを構築する側から見て要求仕様書になっていることが理想。現場で創ったアナログ情報がシステム化というデジタルの世界ににシームレスに結びつく事が問題を極小化させることになる。
9時3分:まさにここが今,一番できないところであろう。直前のご意見にあったように,現場の一番分かっているエースを専任でチームに入れ,少数精鋭で整理すれば,もれのない要求仕様書が作れるはずである。そのときにコンサルタント数人に,支援してもらえばよいわけだ。
9時15分:ここでいったん中断。家を出て,会社へ向かう。殿様出勤であるが,3時間睡眠なんだから仕方がない,と自分で納得する。
(続く)
全文は以下のページでご覧ください。
■第1部 ~1月24日1時18分
■第2部 1月24日1時26分~2時38分
■第3部 1月24日2時45分~3時24分
■第4部 1月24日8時20分~9時15分(本記事)
■第5部 1月24日11時10分~25日18時
■第6部 1月25日19時~19時24分
■第7部 1月25日22時42分~23時40分
(谷島 宣之=ビズテック局編集委員)