米Texas Instruments(TI)社は、静止時(無負荷時)の消費電流が60nA(標準値)と少ない降圧型DC-DCコンバーターIC「TPS62840」を発売した(ニュースリリース)。「静止時消費電流は業界最最少であり、同等性能の競合他社品と比較して約1/3に抑えた」(同社)。さらに、出力電流が1μAの軽負荷時でも、80%と高い変換効率が得られるという。このため、電池で駆動する携帯型電子機器に適用すれば、電池駆動時間の延長や、使用する電池セル数の削減、電池パックの小型化などが実現できる。具体的な応用先は、IoT機器(スマートセンサー)やスマートメーター、スマートサーモスタット、ウエアラブル機器、医療用センサーパッチ、患者モニター機器、テスト/測定機器などである。

静止時消費電流が60nAと少ない降圧型DC-DCコンバーターIC。IoT機器やスマートメーターなどに向ける。TIのイメージ
静止時消費電流が60nAと少ない降圧型DC-DCコンバーターIC。IoT機器やスマートメーターなどに向ける。TIのイメージ
[画像のクリックで拡大表示]

 同社独自の電源制御方式である「DCS-Control(Direct Control with Seamless Transition into Power Save Mode-Control)」を採用することなどで、静止時の消費電流を削減した。この電源制御方式は、ヒステリシス制御方式と電圧モード制御方式の両方のメリットを得られるという。ハイサイドスイッチとローサイドスイッチを使う同期整流方式に対応する。オン抵抗は、ハイサイドスイッチが430mΩ(標準値)、ローサイドスイッチが170mΩ(標準値)である。

 入力電圧範囲は+1.8〜6.5Vである。1セルのLiイオン2次電池や、2〜4セルのアルカリ乾電池などに対応する。出力電圧範囲は+1.8〜3.3Vである。この範囲内で16種類の出力電圧をプリセットしており、1個の外付け抵抗器を使っていずれかの出力電圧を選択できる。出力電流は最大750mA。スイッチング周波数は1.8MHz(標準値)である。通常時のPWM動作と軽負荷時のPFM動作を自動的に行き来するPFM/PWMモードと、軽負荷時も強制的にPWMで動作させる強制PWMモードを用意した。PFM/PWMモードを使えば軽負荷時の変換効率を高められ抑制でき、EMI(放射電磁雑音)の対策が容易になる。

 パッケージは、実装面積が1.5mm×2.0mmの8端子SOBと、0.97mm×1.47mmの6端子WCSPを用意した。動作接合部温度範囲は−40〜+125℃。現在サンプル出荷中である。1000個購入時の米国での参考単価は0.85米ドルからである。このほか、実装面積が3mm×5mmの8端子HVSSOP封止品も開発中で、2019年後半に製品化する予定である。