JR東京駅から上越新幹線に乗り込んで1時間弱。本庄早稲田駅に降り立つと、目の前に白を基調にした真新しい建物が飛び込んでくる。カインズ本部(埼玉県本庄市)だ。

 2014年12月1日午後4時過ぎ。吹き抜けのロビーを抜けてエレベーターに乗り、3階の会議室のドアを開けると、異様な光景が目に飛び込んできた。会議室には20人強の社員が集まり、立ったまま議論を繰り広げる。土屋裕雅社長の姿もある。

 前方のスクリーンには、こたつやクリスマスツリーセットといった季節商品の販売実績や計画対比が次々と映し出される。それぞれの商品の販売担当者が入れ替わり立ち替わり会議室に入ってきて、データやグラフを指さしながら、状況を5分程度で簡潔に説明する。

 「まだ気温が下がらないので出足は鈍いです」という担当者の説明に対し、「競合の価格はどうなっているか」「値下げを実施する前に陳列を変えてみたら」「ネットでの販促を強化すれば状況が好転するかもしれない」といったアドバイスが矢継ぎ早に飛ぶ。

アナリストがデータ操作

 会議に立ち会うのは、土屋社長や売り場を統括する役員のほか、販売や物流、MD(マーチャンダイジング)、在庫を調整する「業務改善室」といった部門の総勢20人強。様々な立場から知恵を出し合い、「売り切る」方策を共に考える。

 これはカインズ本部で毎週月曜日の午後に開催する「在庫計画会議」。主要なPB商品について、販売担当者が売れ行きや在庫のデータを示しながら、追加の施策を提案する。その場で施策の可否を即決し、すぐさまアクション(実行)につなげる。1回当たり5つ程度の商品について話し合い、5~10分で1つの商品の議論を終える流れだ。

毎週月曜日に本部で開催する「在庫計画会議」では、MDプロのデータを基に、主要なPB商品の価格や陳列、販促施策の見直しを即決する。右から4人目がカインズの土屋裕雅社長<br>写真撮影:村田 和聡
毎週月曜日に本部で開催する「在庫計画会議」では、MDプロのデータを基に、主要なPB商品の価格や陳列、販促施策の見直しを即決する。右から4人目がカインズの土屋裕雅社長
写真撮影:村田 和聡
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 この場で重要な役割を担うのが、IT部門の担当者。唯一着席し、パソコンを操作する。発表者や参加者の発言を受けて、該当するデータやグラフをスクリーンに瞬時に映し出すアナリストの役割を担っている。

 例えば、発表者が「全体の消化率は55%程度で、昨年とはだいぶ違う動きになっています」と発言すれば、前年実績と今の販売実績、販売計画、入庫計画の推移を示したグラフをすぐさま映し出す。「このタイミングで価格を下げて一気に売り切りたい」と提案すれば、原価と今の売値、値下げをした後の価格、販売計画などを一覧できる表に画面を切り替える。

 陳列の見直しに話が及ぶと、前方のスクリーンの脇に置いた液晶ディスプレーに、変更前後の陳列写真を表示させる。まさに「データドリブン会議」だ。

 彼らが操るITシステムが「MDプロ」。カインズのPB商品の企画から販売までの全サイクルを管理する“心臓部”なのだ。

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