連載の2回目にも紹介しましたが、動画=映像は19世紀の終わりにこの世に生まれました。最初は、カメラを使って現実を写しとった「動く巨大写真」として見世物興行で人気を博しました。それが次第にメディアとして発展し、現在ではごく身近な、誰にでも扱える表現手段や記録手段として定着しています。
この動画の発展、あるいは進化を考える上で「撮影技術」と同じぐらい重要なものが「編集技術」です。
前回、前々回とiPhoneを使った動画編集を解説してきました。その中で、今では当たり前になった「カットの入れ替え」や「全体を見せたカットの後にアップをつなげて詳細を伝える」、「長いカットを分割して別のカットを間に挟み込む」といった編集技法は、映像史の中で徐々に「発見」されてきたものでした。動画の誕生とともにあったものではないのです。
最初の映画は動く写真だった
最初の動画は、初期の映画=動く写真でした。
オーギュストとルイのリュミエール兄弟によるシネマトグラフは、現実を写しとった「動く写真」として大きな興業収益をあげました。
このころの映画は、ある情景をじーっと映画のカメラで写しとり、それをそのまま劇場で見せていました。現実の記録であるところの写真が動き、過去の現実が目の前に現れるという見世物だったわけです。
そこには「編集」という概念はありません。動く巨大写真=動画だったのです。
最初の編集はトリックだった
やがて、映画の制作者たちは、フィルムを切ってつなぎ直したり、別々のフィルムを組み合わせると、さまざまな視覚効果を作りだせることを発見していきます。
最初に、意図的な編集を行ったのは、リュミエールと同時代のフランス人、ジョルジュ・メリエスという人だったと言われています。
メリエスはもともと、マジックの興行師でした。マジックのような「不思議なこと」を映画を使って作り、それを見世物にして稼いでいたのです。その演出としてトリッキーな編集を使っていました。