今回は、動画とはどんなメディアであり、これをどう捉えて活用していったらいいのかを考えます。動画の原点を知り、動画は「そもそも」どんなメディアなのかを知ることで、手軽にiPhoneで作った動画でも、それなりに価値を発信し豊かなメリットを生む存在に仕立てられるのです。
まずは、動画というメディアの原点を訪ねて、19世紀の欧州に行ってみましょう。
動画は19世紀生まれ
動く映像、即ち動画は、産業革命華やかかりし19世紀の欧州で生まれました。日本でいえば幕末の時代です。
動画は、大きく二つの技術の組み合わせでできています。一つは「写真術」、もう一つは動く映像を見せる「アニメーション技術」です。
写真術は、1820年代にフランス人発明家、ニエプスによって発明されました。アスファルトを塗った板に、カメラ・オブスクラと呼ばれる光学装置を使って像を写して感光させ、風景などを写し取ったのが最初です。
もう一方のアニメーション技術は、欧州で1830年代に発明された「おどろき盤(フェナキスティスコープ)」などを先祖に生まれました。おどろき盤とは円盤の周囲に連続写真のように動きを分解した絵を描いておき、この円板を回転させながら絵を鏡に映すおもちゃです。この絵をスリットから透かして見ると、動いているように見えました。
そして、1880年代にフランスのリュミエールや、アメリカのエジソンらが、両者を合体させて「動く写真」を発明します。動画は化学反応を使って現実を写し取る写真術を“母”に、目の錯覚を応用したからくりおもちゃを“父”に生まれたのです。
動画は「動く写真」
19世の終わりに誕生した最初期の動画装置は、スクリーンで上映される興業映像の一種で、現在の「映画」の直系の祖先にあたるものです。映画の起源については諸説ありますが、一般的にはフランスの実業家、リュミエール兄弟が発明した「シネマトグラフ」にあるとされています。
その原理は、長いフィルムに連続写真を焼き付け、その写真を次々に投影していくというものです。こうすると人間の目が残像効果により写真と写真の間を補うため、一連の「動く像」として見せられるのです。
この原理は現在の映画でも同じです。iPhoneで撮影した動画でもなんら変わるところはありません。つまり動画は、写真を動くようにしたものであり、動画のそもそもの本性は「写真」なのです。
では、写真の一番大きな特性とは何でしょうか?それは光学装置を使って目の前の現実をそのままコピーすることです。写真は現実の縮小コピーもしくはミニチュアのようなものであり、それが時間軸を伴うと動画になるわけです。