コンサルティングや調査のプロセスにおいて、効果的なインタビューを行うことは、報告書など納品物のクオリティを上げる重要なポイントです。対象者の「生々しい本音」や、社内文書に書くのがためらわれる類の話など、対面形式のインタビューでのみ知ることのできる情報は意外と多く、これらがキー情報となるケースも少なくありません。そのためコンサルタントは、何とか有益な情報を聞き出そうと様々なテクニックを駆使します。

「自分の同類」と感じると身構えなくなる

 差し障りのない情報であれば、インタビューの相手も比較的抵抗なく話してくれます。しかし、微妙なニュアンスを含む情報を見知らぬ他人に話すことは、一般的に躊躇しがちです。もちろん相手が友人で既に信頼関係が築かれている場合や、相手が無類の話し好きであるようなケースならば別ですが、多くの場合、インタビュアーは初対面の相手であり、インタビュー対象者も話すのが苦手であったり、コミュニケーションに消極的なことが少なくありません。

 相手がどのようなタイプの人であれ、コンサルタントとしては一期一会の機会に価値ある情報をどうしても引き出す必要があります。私自身、新聞記者、雑誌編集者、コンサルタントとして、30年以上の取材・執筆経験を持ちますが、一貫してインタビューという行為が、最も緊張する業務でした。

 インタビューを成功させるには、多種多様なノウハウやコツがあり、それらはどのようなケースでも一様に当てはまるものではなく、インタビューの状況や対象者によって、毎回、調整やアレンジが欠かせません。そんな中で、私が新人新聞記者時代に先輩から教わって、多くのケースで有効であり、今でも心がけているコツがあります。それは「相手の生理や波長に合わせた話し方をする」ことです。

 具体的には「話す声の大きさとトーン(音程)」「話すスピードとリズム」「話し方」「雰囲気」など、会話の様々な要素を、インタビュアー自身が、インタビュー相手のそれと極力同じように調整する、ということです。「話し方」とは、例えば「滑舌良くなめらかに話す」のか、あるいは「とつとつと言葉を絞り出すように話す」のかなど。「雰囲気」とは、例えば「陽気な話し方」なのか、あるいは「感情を抑えるような話し方」なのか、などです。

 初対面の人との会話は、誰でも多少は身構えるものです。そんなとき、相手が同郷であったり、同じ学校の卒業生であれば、すぐに「同類意識」が芽生えて打ち解けやすくなるでしょうが、そうしたケースは多くはありません。

 だから「見知らぬ人」に抱く緊張を少しでも解きほぐすために、話をしている相手が、自分と同じような話し方をする、つまり少なくとも会話に関して「生理や波長が似ている人」というシチュエーションを演出するわけです。そうすることで生まれる擬似的な“同類感”が呼び水となって、相手からスムーズに話を引き出しやすくなり、その流れに“きわどい情報”がサラリと混じってくる、というケースがこれまでに何度もありました。

 この手法は、特に新聞記者時代の厳しい状況下のインタビューで有効です。事故や事件に遭遇して、悲嘆にくれている被害者やその家族の取材を何回も経験しました。そのような状況だからと言って「何も話してくれませんでした」では済まされない職業です。

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