今回はBtoBマーケティングの「法律面」での日米の違いについて見てみようと思います。

 最初に申し上げたいことは、

「マーケターは、マーケティングに関わる法律は絶対に勉強すべき」

ということです。日本は法治国家ですから、この国でビジネスをするということは、少なくとも自分の領域の法律は知っていることが前提になります。法律に違反した人が「知らなかった」と言っているのを聞きますが、法律は無知を許しません。知らなかったのだから許して欲しい、というのは通用しないのです。またせっかくのマーケティング企画を法務部門から横槍を入れられて止めてしまうケースも目にしますが、これも法律を勉強していないから説明も説得もできないのです。

 MA(マーケティングオートメーション)は言ってみればマーケティング用のスポーツカーです。高速で走れますから運転も難しく、事故を起こせば被害も甚大です。それを運転するドライバーがもし道路交通法を知らなかったらどうなるでしょう?赤信号を突っ切り、一方通行を逆走し、制限速度を破ります。危なくて見ていられません。今の日本でMAが普及するということは、そういうことなのです。

 米国のマーケティング系のカンファレンスなどに参加すると、目立つのはデータマネジメントの会社です。マネジメントと言っても彼らは顧客企業のデータ管理を請け負っているのではなく、自社で収集した膨大なデータを様々な形態で販売しているのです。保有しているデータや収集の手法、付与している属性データなどによって特徴を出していますから、製品カテゴリーや価格帯、エリア、そして特殊セグメント(趣味嗜好・所得・家族構成・行動履歴など)をターゲットにしたマーケティングなどに活用されています。

 しかし、こうした個人にひもづくデータを販売することは日本では実質的に違法になります。実質的というのはいくつかの条件をクリアした場合、例えば本人に対して適切な利用目的の通知を行い、販売に対する同意を得た場合などは合法になるからです。ただし、第三者が自分のデータを販売して利益を得ることに同意する人がいるとは考えられませんので、日本では個人情報は買えない、と考えた方が良いのです。

 恐らく先進国の中で、マーケティングを実施する上で最も厳しい法令を持っている国が日本です。EUなどはさらに詳細で厳しい法令をつくると数年前からアナウンスしていますが、各国の思惑があってなかなかまとまりません。米国は合衆国ですから、こうした法律は州法で決めることが多いのですが、Webや電子メールのオンラインコミュニケーションや、紙のダイレクトメールなどは州をまたぐので、そこはガイドラインで対応する場合が多いのです。私も所属しているDMA(米国ダイレクト・マーケティング協会)はメール・プレファレンス・サービス(MPS)を原則としています。これは電子メールやダイレクトメールを受けとった人から申し出があった場合、その人の個人情報を発送用リストから取り除くシステムです。

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