2015年5月に米国ナッシュビルで開催されたSiriusDecisions のマーケティングイベント「Summit2015」で、アナリストやアワード受賞者のプレゼンテーションで最も多く出たキーワードは「Alignment」でした。「調整・連携」などを表す名詞であり、動詞だと「一直線に並べる・整列させる」という意味を持ちます。SiriusDecisions 創業者のJohn Neesonは、基調講演の中で「セールスとマーケティングと製品のAlignmentは高収益企業の特徴である」と話し、具体的な数字を列挙して、連携している場合としていない場合ではどのくらい収益性や成長スピードが違うのかを解説しました。

 私はもう10年以上前から、日本企業のマーケティング活動の最大の問題点は、展示会、広告、セミナー、テレマーケティング、メールマガジン、Webなどが「部分最適」で運用されており、これを「全体最適」に修正できなければ、売上に対してなんの貢献もできず、その結果マーケティング部門の予算や組織は縮小され、やがて営業の「やっかいもの」になってしまうと言い続けてきました。この「全体最適」と、今年のSummitでのキーワード「Alignment」はとても近いニュアンスを持っています。

 「部分最適」のマーケティングを指して、かつて米国では「パッチワークマーケティング」と言っていました。パッチワーク、つまり「つぎはぎだらけ」で一貫性がなく、疲弊はしても成果が出ないという意味で、もちろん褒め言葉ではありません。この状態だとそれぞれがシナジー(相乗効果)を発揮できませんから、無駄が多い上に、売上に貢献しているのかいないのか、さっぱり効果測定ができない、ということになり、景気が悪くなると真っ先に予算削減の対象になってしまいます。

 企業の業績が良いときのマーケティング部門は「部分最適」でも評価してもらえます。業績が悪いときにはやっきになって「犯人探し」をして予算をカットする企業でも、業績が良いときには「みんな良く頑張った」となります。もちろん営業部門も十分に評価されますから、社内の同僚には寛大になります。マーケティング部門も、「展示会」でたくさんの名刺やアンケートを収集すれば、「セミナー」を満席にすれば、「テレマーケティング」でアポイントをたくさん獲れば、「Web」のPVを増やせば、「メディア」の取材を増やせば、メディアが発表する「認知度調査」で順位を上げれば、それだけで充分に評価してもらえます。この活動は売上にあまり貢献していないのでは?などとは誰も言いません。

 でも、いったん業績や業績見通しが悪化するとそうはいきません。売上への貢献度を定量的に説明できなければ「無駄」というレッテルを貼られて予算を削減され、部門を縮小されます。「予算カットの3K」という言葉があります。「広告費」「交際費」「交通費」の頭文字からきた言葉で、不景気のときに真っ先に削減される経費項目のことです。この広告費にマーケティング予算が含まれる場合、私はしつこく食い下がります。「売れる仕組み」であり、売上に多大な貢献ができるマーケティングが、接待やタクシーチケットと同列に見られること自体おかしいと思うからです。

 展示会、セミナー、リードデータマネジメント、Web&メルマガ、などは売上を目的とした「手段」でありプロセスです。ですから売上にどれだけ貢献したか、という定量的な指標で評価するのは当然なのですが、それぞれの担当者が各プロセスを掘り下げていくうちに、ついついプロセスが「目的化」し、ついには部分最適に陥ってしまうのです。

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