2014年は日本のマーケティングオートメーション(以下、MA)元年として記憶されるかも知れません。それまで日本市場に全く興味を示さなかった欧米のMA各社が一斉に日本市場に製品やサービスを投入し、日本法人を設立し、買収した企業も自社製品とマージした製品をリリースしました。Oracle、Adobe Systems、IBM、 Teradata、Microsoft、salesforce.com(以下、SFDC)など日本でも大きなビジネスを展開している企業がMA製品の買収によってこの市場に乗り出したことで、MAという言葉もいきなりメジャーになりました。

 しかし、MAってなに?という方もまだまだ多いと思います。そこで今回から2回にわたってこのMAの歴史や成り立ち、そこから来る個性などを紐解いて説明しようと思います。

MAの歴史はEloquaに始まる

 MAの歴史は1999年にカナダのトロントで創業し、2012年にOracleに買収されたEloqua(エロクア)に始まると言われています。

 その役割は、1990年代中頃から普及してきた第三世代のSFA(Sales Force Automation)の前工程を担当することでした。マーケティングによって営業案件を創出する活動をデマンドジェネレーションと呼びますが、このデマンドジェネレーションのプラットホームを担うソリューションとしてデビューしたのです。

 BtoB企業の営業案件を管理するツールとして1980年代に誕生したSFAは、ONYX(オニキス)、Clarify(クラリファイ)などを第一世代、Oracleをスピンアウトしたトム・シーベルが設立・開発したハイエンドのSiebel(シーベル)、 コールセンター機能を強化したVantive(ヴァンティブ)、Windowsプラットホームで使えるPivotal(ピボタル)などを第二世代とすると、今日、最大のシェアを誇るSFDCやSugerCRM、MicrosoftのDynamics CRMなどは第三世代と言えるものです。

 SFAは言うまでもなく営業案件を管理するツールですが、案件を創りだす機能は持っていません。営業案件を創り出すデマンドジェネレーションのためのツールはMAが誕生する以前は存在しませんでしたから、米国企業のマーケティング担当者はパーツを買って自前で構築するしかありませんでした。顧客データを管理するデータベース、サイロ状のデータを統合するデータマートシステム、メール配信システム、ストリーミングシステム、配信停止や資料請求、セミナー受付などのCGI、コンテンツマネジメントシステム(CMS)、ログ解析システム、データ分析システム(BI)、コールセンター用のCTI(Computer Telephony Integration)などを、マーケティング担当者が自分で選定し組み合わせて自前のマーケティングプラットホームを作っていたのです。

 Eloquaの創業メンバーでCTOを勤めていたSteven Woods(スティーブン・ウッズ)は、その頃トロントでWebマーケティング用にチャットシステムを開発していましたが、こうしたBtoBマーケティングの現状を見て、統合型のマーケティングプラットホームの開発を思い立ちました。SFAに有望な見込み顧客リストを送ることを目的に、メール配信、Web、コールなどもハンドリングできるマルチコンタクトポイントのシステムを設計し、すでにSFAではトップシェアを持っていたSFDCとのAPI連携を最初から打ち出しました。

 自前でパーツをそろえて仕組みを作ってもマーケティングはできますが、システム間のデータ連携などで膨大な作業が発生します。この作業に辟易していたマーケティング担当者は、2000年にリリースされたEloquaをSFAと組み合わせてマーケティング&セールスの仕組みとして使うようになったのです。これがMAと呼ばれるカテゴリーの誕生でした。

 このEloquaの成功を見た、メール配信、キャンペーンマネジメント、CMSなどのシステムベンダーが一斉に自社システムをMAに進化させてこの市場に参入したことで、わずか10年でMAという新しいカテゴリーが誕生したのです。毎年サンフランシスコで開催されるSFDCのイベントDream Forceは、まるでMAの展示会のように多くのブランドが出展し、どのソリューションもSFDCとのAPI連携を売りにしながら個性を競っていました。

 これらのMAを進化のルーツ別に見てみましょう。

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