米イージェネラは、基幹システム向けに可用性やDR(災害復旧)機能に注力したIaaS型クラウドサービス「Xterity」を2015年6月にグローバルで開始している(関連記事:イージェネラ、可用性や災害復旧に注力した基幹向けIaaSクラウドを10月開始)。Xterityの特徴は、仮想サーバーだけでなく、ラックマウント型の物理サーバー機やネットワーク機器で構成する情報システム一式を、設定を含めて動的にプロビジョニングできること。ITproは、同社CEOに、Xterityの事業について状況を聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ライター)

企業から見たIaaS型クラウドサービスの状況は。

写真●米イージェネラ、社長兼CEO(最高経営責任者)のピーター・マンカ氏
写真●米イージェネラ、社長兼CEO(最高経営責任者)のピーター・マンカ氏
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 ユーザー企業は、オンプレミスで運営している業務システムをクラウドに移行したがっている。クラウドなら、必要に応じてITリソースをオンデマンドで拡張できるし、設備投資費や運用費を削減できるからだ。

 多くのユーザー企業は、業務システムをクラウドに移行する際に、パートナーであるベンダー企業にクラウドサービスの提供や調達を依頼する。これに対してベンダー企業は、これまで二つの選択肢を持っていた。AWS(アマゾンウェブサービス)のようなクラウドサービスをリセラー(再販業者)としてユーザー企業に売るか、自前で構築したクラウドサービスをユーザー企業に売るかだ。

 Xterityは、これらとは別の、第三の選択肢になる。

ユーザー企業から見たAWSとXterityの違いは。

 AWSなどの既存のパブリッククラウドには問題がある。自由度が足りないのだ。システム構成やメニューが決まっており、カスタマイズできない。クラウドサービスのリセラー、つまりベンダーやMSP(マネージドサービスプロバイダー)などが付加価値を付けにくく、サービスが画一化してしまう。

 Xterityは、AWSのようにリセラーが再販できるサービスである一方で、AWSよりもシステム構成の自由度が高い。ユーザーの需要に合わせてリセラー自身がシステム構成を自由にカスタマイズできる。独自の付加価値を付けてリセラー独自のメニューとして提供できる。

 Xterityは可用性も高い。稼働率99.99%(サーバー停止時間は1カ月当たり4分以下)のSLAをうたっている。これは他のパブリッククラウドよりも高い。また、米エクイニクスのデータセンターを利用しているので、エクイニクスのデータセンターがある国なら世界中どこでも利用できる。エクイニクスはAWSと直結しているので、AWSと組み合わせたシステムを構築する場合も都合がよい。

Xterityはユーザー企業に直販しないのか。チャネル販売のみなのか。

 直販はしない。ユーザー企業は、Xterityに関心を持ったのなら、パートナーのベンダー企業に「Xterityを使ってみたいので売ってほしい」と伝えてほしい。実際のサービスメニューやシステム構成は個々のリセラーが決める。自由度の高いシステム構成で利用できるだろう。

 リセラーは、ユーザー企業からの注文を受けて卸売りする形になる。在庫を持つ必要がないので、その面でリセラーが抱えるリスクは無い。

 リセラーから見た最大のメリットは、イージェネラからリセラーへの卸値を公表していないので、利幅を大きく取れること。実際に、リセラーは実績ベースで20%~55%の利益が出る価格を設定している。

 だからと言って、ユーザー企業がリセラーに高いお金を払わされているというわけではない。ユーザー価格はAWSと競合する。

Xterityで提供できる特徴的なサービスメニューは。

 Xterityのサービスの柱は三つある。IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)、BaaS(バックアップ・アズ・ア・サービス)、DRaaS(ディザスターリカバリー・アズ・ア・サービス)だ。このうちDRaaSは、災害時の復旧用にサーバーリソースをピンポイントで用意する安価なDRサービスで、人気がある。CDP(継続的データ保護)ソフトを使って、システムの複製を仮想サーバーイメージとして作成しておく仕組みだ。

 DRaaSで保護する業務システムは、Xterity上で稼働している必要はない。オンプレミス環境のシステムも保護できる。業務システムをオンプレミスで運用しながら、クラウド上に、しかも災害時にだけDRサイトを用意できる。これは、他のパブリッククラウドサービスと比べたXterityの大きな差異化ポイントだ。

サービス開始からのXterityの利用状況は。

 2015年6月にワールドワイドでXterityのサービスを開始してから、すでに125社以上のリセラーが付いた。このうち20社以上は米国だ。米国のリセラーの1社であるGreenlightは、Xterityのリセールを始めてから3カ月で売り上げが6倍に増えた。

 日本では2015年11月からXterityを提供している。現在2社のリセラーが付いている。まもなく、もう1社加わる。アプリケーションベンダーで、Xterityとアプリケーションを組み合わせてSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)として提供しようとしている。同社の顧客の多くは現在オンプレミスでアプリケーションを使っており、同社はクラウドへの移行を支援することを狙っている。