みなさまこんにちは、アクトゼロの黒沼です。先日、匿名はてなダイアリー上で以下のエントリーが話題になっていました。
漫画家やめたい 子供の頃からの夢だった漫画家。 35になった今、ホント割にあわねーなって思う。 好きで選んだ道だけど ジャンプですら今や新人単行本初版は3万。短期打ち切りだと3巻で9万。360万だよ、印税。 |
その後、最終的には編集者の高給や出版社への怨嗟へとつながっていくのですが、マンガを取り囲む業界のきつさはよく伝わってくる文章でした。
プラットフォームのデジタル化がもたらす作品数の爆発的増加
マンガボックス、 Comico(コミコ)など無料で漫画が読めるアプリが人気です。無料アプリのお陰で、漫画雑誌での連載経験のない作家の中にも、人気作家が生まれつつ有ります。各出版社も自社のマンガ雑誌名を冠したネットサービスや漫画アプリを続々リリース、これを追撃しています。
漫画アプリやpixivのような漫画作品を公開できるデジタルプラットフォームが登場する以前、漫画家になるには掲載枠の限られた漫画雑誌上でデビューするしかありませんでした。他の手段で漫画家になる事ができないということは、漫画作品数自体にキャップがかかっている状態とも言えます。読者は漫画雑誌に連載している限られた作品の中からしか、自分が読む作品を選ぶことが出来ませんでした。ところが、漫画のデジタルプラットフォーム化は、漫画雑誌にあった誌面のページ数の限界を取り去り、印刷代などの諸経費もかからないことから、「少しでも可能性のある作品ならば、とりあえず公開する」ということが可能になりました。
読者が漫画を読むことに割ける物理的な時間が大きく増えない限り、作品数の爆発的増加はこれまで漫画雑誌上で連載されていた作品グループからファンを奪います。大ヒットは生まれにくくなり、「同世代なら誰もが知っている作品」はどんどん少なくなっていきます。デジタルプラットフォーム化によって、今では読みきれないほどの作品がネット・アプリ上に無料に近い形で公開され、それぞれに独立した小さなファンが付く時代となってしまったのです。
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