コンテンツであふれかえる世の中

 ブログの普及、CGM(消費者生成メディア)プラットフォームの充実、ソーシャルメディアによる拡散経路の発達に加え、フォロワー数などによる個人評価の「見える化」は、インターネット利用者が自ら情報を発信することのハードルを下げると同時に、そのモチベーションを向上させました。

 テキストはもちろん、イラストや動画・音楽など、あらゆる創作物が無料で大量にネット上にあふれることによって、それまでプロによって限定的に作られていたコンテンツの価値が相対的に下がりました。それにともない、音楽や出版などさまざまコンテンツビジネスが打撃を受け、従来のビジネスモデルからの変更を余儀なくされています。

 この動きは、マーケティングにおいても同じです。例えば、従来のように「無料でコンテンツを提供して、ついでに広告も見てもらう」という広告モデルにも限界が来ています。

「無料でコンテンツ見せるから、広告も見てね」モデルの終焉

 テレビCMは、ネット上の無料動画コンテンツとの間で競争する必要が出てきました。最近では、テレビで「YouTube」「Hulu」「ネットフリックス」など動画サイトのコンテンツを楽しむこともできるようになってきています。つまり、従来型の地上波で放映されるテレビCMに接触する機会自体が減りつつあるということです。また、テレビを見ていたとしても、CMになるとスマートフォン(スマホ)をいじる、という光景はすでに当たり前になってきています。

 同様に、ネット広告にもビジネスモデルの変化が起きてきています。広告ではない、無料のコンテンツがネット上には数多く存在しており、作り手側はわずかな収益を得るより、ユーザーに「承認」されることを期待します。動画共有サイト「ニコニコ動画」では、クリエイター自身がお金を払って自分の作品を宣伝することが可能です。クリエイター自身が膨大なコンテンツの中から自分の作品を見つけてもらうために、自らお金を払う時代なのです。

 他に見るべきものが増えた結果、すぐに広告だとわかるようなバナー広告やテキスト広告は、年々クリックされにくくなってきています。

 ニュースアプリなどで叫ばれている「ネイティブアド」の存在もまた、こうしたネット広告の限界を乗り越えるために考えられた仕組みです。広告と非広告コンテンツとの境界線を曖昧にすることで、ユーザーに広告と認識させずにプロモーションを図りたいという思惑です。しかし、この手法はコンテンツだと思ってクリックしてくれたユーザーを「だましうち」することになります。また、そもそもコンテンツ化できる価値があるのであれば、最初から広告として掲載する必要性はない、という自己矛盾をはらんでいます。

 では、この時代にマーケティングはどう変化するべきなのでしょうか?

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