調査内容 2009年度IT予算(分野別)の「金融危機以前の計画」比
調査時期 2009年3月中旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 3097件(1204件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスが企業の情報システム担当者を対象に行った2009年3月調査で,回答者が予算執行・承認権限を持つ2009年度(2009年4月~2010年3月)のシステム予算についても,分野別に「2008年9月の金融危機以前の計画と比べてどう変わったか」を聞いた。

 削減率の平均が最も小さいのは今回の調査から対象分野に加えた「エンタープライズ・アーキテクチャー」の18.7%で,次いで「運用・危機対策系」の20.5%。回答数が30未満で参考値扱いの「特定業種業務(銀行勘定系,自治体徴税,医療情報化など)」(今回調査から追加)も削減率が15.9%と小さく,4月15日付け記事で紹介した今回調査での「2009年第1四半期(2009年1月~3月)IT予算の危機以前の計画比」と同じ分野が上位を占めた。

全分野の「危機前計画比削減率」が1月~3月期より縮小

 提示した23分野のうち「特定業種業務」を除外した22分野の中で,「2009年度IT予算の危機前計画比」が「2009年第1四半期IT予算の危機前計画比」より小さい(削減率が大きい)のは,「運用・危機対策系」(2009年第1四半期-20.3%→2009年度-20.5%)と「既存システムの再構築」(同-26.5%→-27.4%)の2分野だけで,ともに1ポイント以内の減少である。残り20分野は2009年度の削減率が2009年第1四半期の削減率よりも0.4ポイント(「CRM・顧客関連」)~7.2ポイント(「物流」)小さく,全体としてみると「金融危機以前の計画に対する予算削減は,2009年1月~3月期が底で,2009年4月以後の新年度は小幅ながら戻り基調」という結果になった。

12月調査比ではインフラ投資が削減拡大,業務アプリは回復基調

 ただし,3カ月前に実施した前回2008年12月調査での「2009年度IT予算の危機前計画比」と突き合わせて見ると,比較可能な20分野のうち削減率が小さくなったのは「SCM」(2008年12月調査-33.7%→2009年3月調査-25.2%),「経営戦略系」(同-34.0%→-28.8%),「SFA・営業系」(同-29.4%→-25.4%),「運用・危機対策系」(同-21.1%→-20.5%)の4分野。16分野は2008年12月調査時より,危機前計画比の予算削減率が拡大していた。

 最も削減率が拡大したのは「新規システム開発」(同-21.1%→-34.3%)の13.1ポイント。次いでインフラ系の「アプリケーション(システム)間連携基盤系」(同-19.0%→-30.5%)と「ネットワーク系」(同-19.3%→-30.4%),「ソフトウエア購入」(同-21.2%→-32.3%),「ハードウエア購入」(同-21.9%→-32.9%)と,IT基盤整備関連の予算にカット率の拡大が目立つ。

「危機がなければ」SFAの予算は前年度比25%,会計19%増

 最後に,4月16日付け記事で紹介した前年度比の増減率の結果から,各分野について「金融危機による予算削減がなかったら,2009年度のIT予算は前年度に比べどれだけ伸びる計画だったか」を試算した。4月15日付け記事での分析と同様,選択肢が異なる設問を代表値で換算した結果の比較なので,参考指標として見ていただきたい。

 結果は,有効回答数30以上を得た22分野のうち,18分野が前年度比5%以上の増加で,「エンタープライズ・アーキテクチャー」だけが5%以上のマイナス(-9.1%)。危機がなかった場合の予算の伸び率が大きかったと想定されるのは「SFA・営業系」で前年度比25.4%増。次いで「会計」(18.8%増),「ハードウエア購入」(17.5%増),「経営戦略系」(17.3%増),「新規システム開発」(17.0%増)。「情報系」(15.6%増),「インターネット系」(15.1%増),「ストレージ系」(15.0%増)の各分野への投資意欲も,経済環境の急変がなければ高かったことになる。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者のうち,予算執行・承認権限を持つ人を対象に,「執行・承認の権限を持つシステム分野の2009年度の予算は,2008年9月の金融危機以前の計画と比べてどう変わったか」を聞いた。
 分野別のITインフラ系のうち,「情報系システム」はグループウエアや情報共有システム,「ネットワーク系システム」はWAN,LAN,電話,「インターネット系システム」は情報発信,電子商取引,マーケティング関連のシステムを指すものとして回答を求めた。「運用・危機対策系システム」はビジネス・コンティニュイティー関連のシステムも含む。目的別のうち「運用・保守開発」は信頼性向上やコスト・ダウンのための開発を含む運用・保守,ハード/ソフト別での「ソフトウエア購入」の対象範囲はアプリケーションやミドルウエアを指す,と設問に記載している。
 今回から分野の選択肢を見直し,【業務別】,【インフラ系】,【目的別】,【ハード/ソフト別】のそれぞれに置いていた「その他」を廃止。【業務別】に「特定業種業務(銀行勘定系,自治体徴税,医療情報化など)」,【インフラ系】に「エンタープライズ・アーキテクチャー」,【ハード/ソフト別】に「仮想化基盤,OSの購入」の3つの選択肢を追加した。
 本文と図中のパーセンテージは,選択式回答の「予算ゼロに変更した」を-100%,「75%以上減額した」を-87.5%,「50%~75%減額」を-62.5%,「30%~50%減額」を-40.0%,「15%~30%減額」を-22.5%,「5%~15%減額」を-10.0%,「危機以前の予算通り」を0.0%,「危機以前の予算より増額した」を+10.0%に換算して加重平均した値である。
 調査実施時期は2009年3月中旬,調査全体の有効回答は3097件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1204件。

図●来年度(2009年4月~2010年3月)の分野別IT予算~金融危機以前の計画比
図●来年度(2009年4月~2010年3月)の分野別IT予算~金融危機以前の計画比