経済危機前計画比，第1四半期のIT予算は各分野とも2割～4割の大幅削減

　日経マーケット・アクセスが企業の情報システム担当者を対象に行った2009年3月調査で，「回答者が予算執行・承認権限を持つシステム分野の2009年第1四半期（2009年1月～3月）の予算が，2008年9月の金融危機以前の計画と比べてどう変わったか」を聞いたところ，削減率の平均が最も小さいのは「運用・危機対策系」の20.3％と，今回の調査から対象分野に加えた「エンタープライズ・アーキテクチャー」の22.0％。回答数が30未満だったため参考値扱いだが，「特定業種業務（銀行勘定系，自治体徴税，医療情報化など）」（今回調査から追加）も平均の削減率が20.7％と，提示した全23分野の中では小幅だった。

　逆に最も大きな削減率となったのは「生産管理」の40.0％，次いで「ソフトウエア購入」の37.4％，「ハードウエア購入」の36.9％。前回2008年12月調査での，2009年第1四半期予算（分野別）の金融危機前計画比の予測値（約16％～35％減）と比べると，削減率をさらに拡大した分野が多かった。

金融危機がなければ前年同期比6％～30％の予算増

　この結果と，4月14日付け記事で紹介した前年同期比増減率の結果から，各分野について「金融危機による予算削減がなかったら，2009年第1四半期のIT予算は前年に比べどれだけ伸びる計画だったか」を試算した。選択肢が異なる設問をそれぞれ代表値で平均換算した結果の比較なので，以下の値はあくまで参考指標として見ていただきたい。

　結果は，提示した23分野全てが前年同期比5％以上の伸び率で，最大は「物流」の29.1％増。20％以上の伸びが想定されたのはこのほか「インターネット系」の22.0％，「経営戦略系」の20.8％，「アプリケーション（システム）間連携基盤系」の20.6％，「情報系」の20.5％，「ネットワーク系」の20.0％の5分野。「セキュリティー」（19.7％増），「ストレージ系」（18.1％増）への投資意欲も，経済環境の急変がなければ高かった。

　逆に，この危機がなかった場合の予算の伸び率が小さかったと想定されるのは「会計」（5.8％増）と「SCM」（6.0％増），「運用・保守開発（信頼性向上やコスト・ダウンのための開発を含む運用・保守）」（6.5％増）。「新規システム開発」は15.4％増，「既存システムの再構築」は11.7％増，「仮想化基盤，OSの購入」は意外に低めで10.2％増という結果だった。

■調査概要
　日経マーケット・アクセスが，ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者のうち，予算執行・承認権限を持つ人を対象に，「執行・承認の権限を持つシステム分野の2009年1月～3月四半期の予算は，2008年9月の金融危機以前の計画と比べてどう変わったか」を聞いた。
　分野別のITインフラ系のうち，「情報系システム」はグループウエアや情報共有システム，「ネットワーク系システム」はWAN，LAN，電話，「インターネット系システム」は情報発信，電子商取引，マーケティング関連のシステムを指すものとして回答を求めた。「運用・危機対策系システム」はビジネス・コンティニュイティー関連のシステムも含む。目的別のうち「運用・保守開発」は信頼性向上やコスト・ダウンのための開発を含む運用・保守，ハード/ソフト別での「ソフトウエア購入」の対象範囲はアプリケーションやミドルウエアを指す，と設問に記載している。
　今回から分野の選択肢を見直し，【業務別】，【インフラ系】，【目的別】，【ハード/ソフト別】のそれぞれに置いていた「その他」を廃止。【業務別】に「特定業種業務（銀行勘定系，自治体徴税，医療情報化など）」，【インフラ系】に「エンタープライズ・アーキテクチャー」，【ハード/ソフト別】に「仮想化基盤，OSの購入」の3つの選択肢を追加した。
　本文と図中のパーセンテージは，選択式回答の「予算ゼロに変更した」を－100％，「75％以上減額した」を－87.5％，「50％～75％減額」を－62.5％，「30％～50％減額」を－40.0％，「15％～30％減額」を－22.5％，「5％～15％減額」を－10.0％，「危機以前の予算通り」を0.0％，「危機以前の予算より増額した」を＋10.0％に換算して加重平均した値である。
　調査実施時期は2009年3月中旬，調査全体の有効回答は3097件，「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務（企画立案・設計・開発・運用・予算承認など）を担当している」とした実質的な有効回答は1204件。

図●最新四半期（2009年1月～3月）の分野別IT予算～金融危機以前の計画比