調査内容 2009年度IT予算の分野別前年度比増減率(予測)
調査時期 2009年3月中旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 3097件(1204件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスが企業の情報システム担当者を対象に行った2009年3月調査で,回答者が予算執行・承認権限を持つシステム分野の2009年度(2009年4月~2010年3月)のIT予算の前年度比増減率(予測値)を,適用業務アプリケーションやITインフラの分野,ハード/ソフト別など23分野に細分して聞いたところ,最も減少率が大きいのは「SCM」(前年度比-27.7%)と「生産管理」(同-27.6%)。逆に減少率が小さいのは「SFA・営業系」(同-6.5%)と「会計」(同-9.2%)。回答数が30未満だったため参考値扱いだが,今回の調査から対象分野に加えた「特定業種業務(銀行勘定系,自治体徴税,医療情報化など)」は同-0.6%で,2009年度の予算がほぼ2008年度と同水準という結果だった。

インフラ系はすべて3カ月前の調査より減少率拡大

 前回2008年12月調査での2009年度予算の前年度比増減率と突き合わせて見ると,比較可能な20分野の中で予算増減率が上昇(マイナス幅が縮小)したのは,前出の「SFA・営業系」(今回-6.5%,3カ月前の調査では-22.2%)と「経営戦略系」(今回-16.4%,3カ月前は-30.9%)が15ポイント前後の大幅アップ。次いで「会計」(今回-9.2%,3カ月前は-14.4%)と「物流」(同-14.5%,-19.1%)の2分野が約5ポイント・アップした。

 3カ月前の調査よりマイナス幅が縮小したのは,以上の業務アプリ系の4分野だけで,他の16分野は全て3カ月前の平均値を下回り,2008年度と比較した2009年度予算の減少率が拡大している。特にインフラ系の7分野(今回調査から追加した「エンタープライズ・アーキテクチャー」を除く)は,2008年12月調査ではいずれも約8%~約12%減と,業務アプリ系(約13%~約31%減)より前年度比の減少率が小さかったが,今回は約18%~約23%。7分野ともほぼ同程度の幅(8ポイント~12ポイント)で揃ってマイナス側にシフトした。

 また,3カ月前の調査では前年度比増減率が平均-2.5%,ほぼ2008年度予算並みだった「運用・保守開発(信頼性向上やコスト・ダウンのための開発を含む運用・保守)」分野が,今回は-20.1%に急落したのも目立つ。

「1月~3月より減少率縮小」底打ち感が出た会計/SFA/ハード/ソフト

 次に,2009年第1四半期(2009年1月~3月期)の分野別前年同期比増減率(4月14日付け記事参照)と,この2009年度(2009年4月~2010年3月)についての分野別前年度比増減率を比較して,「予算削減に底打ち感が出てきた」と言えそうな分野を探して見た。

 回答数不足で参考値の「特定業種業務」(1月~3月期-15.3%→2009年度-0.6%)を除くと,「会計」(同-22.5%→-9.2%)と「SFA・営業系」(同-19.8%→-6.5%)がともに13ポイント強のアップ。次いで「ハードウエア購入」(同-29.3%→-21.1%)と「ソフトウエア購入」(同-32.0%→-24.1%)が,減少率自体はまだ大きいものの,約8ポイント減少率が縮小している。「生産管理」(同-32.7%→-27.6%)も,最悪の状態からは抜け出した感じだ。

 逆に「エンタープライズ・アーキテクチャー」(同-8.7%→-26.1%)は2009年度の予算減少率が1月~3月期より約17ポイント拡大。「運用・危機対策系」(同-9.9%→-18.6%)も約9ポイント拡大しており,第1四半期の前年同期比減少率が最も小さかった2分野が,2009年度に入ってやや下向くという予測になっている。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者のうち,予算執行・承認権限を持つ人を対象に執行・承認の権限を持つシステム分野の予算(年度分)の増減率を聞いた。
 分野別のITインフラ系のうち,「情報系システム」はグループウエアや情報共有システム,「ネットワーク系システム」はWAN,LAN,電話,「インターネット系システム」は情報発信,電子商取引,マーケティング関連のシステムを指すものとして回答を求めた。「運用・危機対策系システム」はビジネス・コンティニュイティー関連のシステムも含む。目的別のうち「運用・保守開発」は信頼性向上やコスト・ダウンのための開発を含む運用・保守,ハード/ソフト別での「ソフトウエア購入」の対象範囲はアプリケーションやミドルウエアを指す,と設問に記載している。
 今回から分野の選択肢を見直し,【業務別】,【インフラ系】,【目的別】,【ハード/ソフト別】のそれぞれに置いていた「その他」を廃止。【業務別】に「特定業種業務(銀行勘定系,自治体徴税,医療情報化など)」,【インフラ系】に「エンタープライズ・アーキテクチャー」,【ハード/ソフト別】に「仮想化基盤,OSの購入」の3つの選択肢を追加した。
 本文と図中のパーセンテージは,選択式回答(最も近いものを一つ選択)の「完全に削減」を-100%,「前年同期の50%未満にまで削減」を-75%,「50%以上80%未満にまで削減」を-35%,「80%以上90%未満」を-15%,「90%以上110%以内」を0%,「110%超120%以内」を+15%,「120%超150%以内」を+35%,「150%超200%以内」を+75%,「200%超」を+125%,「前年同期の予算はゼロ」を+200%に換算して加重平均した。
 調査実施時期は2009年3月中旬,調査全体の有効回答は3097件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1204件。

図●来年度(2009年4月~2010年3月)IT予算の分野別前年度比増減率
図●来年度(2009年4月~2010年3月)IT予算の分野別前年度比増減率