調査内容 2009年度IT予算の分野別前年同期比増減率(予測)
調査時期 2008年12月中旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 3229件(1207件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスが企業の情報システム担当者を対象に行った2008年12月の調査で,2009年度(2009年4月~2010年3月)のIT予算の前年同期比増減率(予測値)も適用業務アプリケーションやITインフラの分野,ハード/ソフト別など20分野(「その他」分野を除く)に細分して聞いたところ,同じ2008年12月の調査で聞いた2008年第4四半期(2008年10月~12月期,1月22日付け記事参照),2009年第1四半期(2009年1月~3月期,1月27日付け記事参照)に比べて,業務アプリケーション系の予算の前年同期比増減率はさらに低下。一方,システム・インフラ7分野と「ハード購入」「ソフト購入」「既存システムの再構築」はやや回復し,「運用・保守開発」は前年同期並みに近い水準にまで大きく戻す。しかし「新規システム開発」は2008年第4四半期,2009年第1四半期とほぼ同じ,15%前後の前年同期比マイナスの水準が,2009年度も継続するという結果になった。

経営戦略系の予算は前年同期比30%減に低下

 2009年度の業務アプリケーション系の予算の前年同期比増減率は,「人事・給与」だけが2008年第4四半期の前年同期比-14.2%,2009年第1四半期の同-13.8%から2009年度に同-13.1%とわずかに上昇するものの,この「人事・給与」-13.1%が8分野中最高。最低は「経営戦略系」の-30.9%(2008年第4四半期は-25.1%,2009年第1四半期は-25.4%)。大多数の分野は前の2四半期より低下し,平均値は-20%前後に集中した。

 2009年度のシステム・インフラ7分野の予算は,2008年第4四半期(「セキュリティー」-11.4%~「ストレージ系」-19.0%),2009年第1四半期(「ネットワーク系」の-15.0%から「ストレージ系」の-21.6%)よりマイナス幅が大きく縮小。「ストレージ系」が約14ポイント・アップの前年同期比-7.9%に押し戻すのを筆頭に,7分野とも-10%前後の平均値となる。「ハード購入」と「ソフト購入」の予算の傾向もインフラ7分野に近く,2008年第4四半期の約-15%,2009年第1四半期の約-19%が,2009年度は前年同期比約-12%~-14%へ小幅ながら回復を見せている。

新規開発予算の抑制を尻目に,運用・保守開発予算は前年度並みへ回復

 「新規システム開発」,「既存システムの再構築」,「運用・保守開発(信頼性向上,コスト・ダウン)」の目的別分類では,2008年第4四半期が前年同期比約-12%~-14%,2009年第1四半期は「運用・保守開発」が約-12%で「再構築」と「新規開発」が約-18%に低下と推移していた。

 2009年度は「運用・保守開発」が前年同期比平均-2.5%とさらに回復。2008年第2四半期の-2.8%(2008年4月~6月期,2008年6月調査)や2007年第3四半期の-8.8%(2007年7月~9月期,2007年9月調査)を上回る水準に上昇した。「再構築」も2009年第1四半期の-18.3%から,2009年度は-9.2%に大きく戻す。

 これに対し,「新規システム開発」は2009年度も投資抑制の傾向が続く見込み。2008年第4四半期の-14.3%,2009年第1四半期の-17.6%から,2009年度も浮上できず前年同期比-16.2%に低迷したまま。2009年度は「守りのIT投資は回復するものの,攻めの投資は見送り」という傾向が顕著だ。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者のうち,予算執行・承認権限を持つ人を対象に,執行・承認の権限を持つシステム分野の予算(年度分)の増減率を聞いた。
 本文中の「IT予算の前年同期比の平均」は,選択式回答(最も近いものを一つ選択)の「完全に削減」を-100%,「前年同期の50%未満にまで削減」を-75%,「50%以上80%未満にまで削減」を-35%,「80%以上90%未満」を-15%,「90%以上110%以内」を0%,「110%超120%以内」を+15%,「120%超150%以内」を+35%,「150%超200%以内」を+75%,「200%超」を+125%,「前年同期の予算はゼロ」を+200%に換算して加重平均した。
 分野別のITインフラ系のうち,「情報系システム」はグループウエアや情報共有システム,「ネットワーク系システム」はWAN,LAN,電話,「インターネット系システム」は情報発信,電子商取引,マーケティング関連のシステムを指すものとして回答を求めた。「運用・危機対策系システム」はビジネス・コンティニュイティー関連のシステムも含む。目的別のうち「運用・保守開発」は信頼性向上やコスト・ダウンのための開発を含む運用・保守,ハード/ソフト別での「ソフトウエア購入」の対象範囲はアプリケーションやミドルウエアを指す,と設問に記載している。
 調査実施時期は2008年12月中旬,調査全体の有効回答は3229件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1207件。

図●来年度(2009年4月~2010年3月)IT予算の分野別前年同期比増減率
図●来年度(2009年4月~2010年3月)IT予算の分野別前年同期比増減率