皆さんは海外出張にお出掛けの際,現地でどのような通信手段を使われるだろうか。筆者がいる編集部では,国際ローミングに対応した携帯電話を持っていくケースが多い。国際ローミングは,国内で使っている携帯電話を海外に持ち出して使えるサービスで,国内と同じ携帯電話番号で着信できる。利用するサービスと渡航先によっては,同じ携帯アドレスあてに送られたメールを受信でき,Webも使える。

 携帯電話事業者3社はいずれも国際ローミングを提供しており,イー・モバイルも2008年夏に始める予定だ。サービスを使うには,日本と海外両方のネットワークを使える国際ローミング対応端末が必要だが,その機種数は着々と増えている。ソフトバンクモバイルは早くから国際ローミングに注力しており,対応機種は多い(関連記事)。NTTドコモは905iシリーズで対応機種を増やしてきた(関連記事)。KDDIは近くサービスをリニューアルし,それに合わせて新機種を投入する。

料金体系は国内と別もの,かつ複雑

 この国際ローミング,とても便利である一方で料金体系やサービス内容は複雑。国内の通話サービスやデータ通信サービスとは別ものだ(例えば定額サービスは適用外)。事業者ごとにローミングできる国・地域と,それぞれの国・地域で使えるメニュー(通話,メール,Web,SMSなど)は違う。料金は国・地域ごとに異なる。同じ国・地域でも,ローミング先の事業者によって料金に差が付くことがある--といった感じだ。

 これだけ違いがあると,それらにどれだけ気付き対処できるかが通信料に表れてくる。調べてみて,結構違うなと実感した。ケース・スタディとして,香港で国際ローミングを使うと仮定して,使い方によって通信料に大きな差が付く例をピックアップしてみる。

 ソフトバンクモバイルの国際ローミング・サービス「世界対応ケータイ」を香港で使うとき,ローミング先として選べるのはCSL,Hutchison,NWPCS,PCCW Mobile,PEOPLES,SmarToneの6社。通話料はどこにローミングするかによって違う。日本への通話料が安いのはCSLとSmarToneで,1分175円。ほかは1分265円で1分につき90円の差がある。海外では着信にも課金されるが(これは他社の国際ローミング・サービスも同じ),着信料が安いのもCSLとSmarToneで1分70円。ほかは1分100円だ。

 NTTドコモの「WORLD WING」を香港で使う場合も,ローミング先は複数ある。使い方によって大差が付くのはパソコンやスマートフォンから(iモードやiチャネルなどを除く)データ通信するときだ。料金は1パケット(128バイト)0.2円の従量制だが,Hutchisonだけ例外。「特定事業者利用時のパケット通信料」の適用対象になる(関連記事)。1万パケットまで1パケット0.2円,以降は12万パケットまで2000円のまま,それ以降は1パケット0.2円になる。これを1日単位で計算する。

 これらの例から,漫然と対応端末を海外に持ち出すだけでは,国際ローミングを活用できていないことが分かる。ソフトバンクモバイルとNTTドコモの国際ローミング対応端末は,手動でローミング先の事業者を設定可能であるため,その方法を覚えておくと良い。国内と違って定額にはならない海外では,「メールは必要なものだけ全文をダウンロードする」などの工夫もできる。

パンフレットを読むほど,節約できて失敗しにくい

 出発前に,渡航先の料金とサービスの料金体系を確認することも大切だろう。料金やサービス内容の変更があり得るからである。例えば,KDDIは3月15日に国際ローミング・サービスをリニューアルする。同社はCDMA方式とGSM方式の2種類のサービスを持つ。GSM方式はこれまで通話だけだったが,リニューアル以降は携帯メールとWebにも対応する。同一の国・地域でもWebとメールの課金体系はCDMA方式とGSM方式で異なる。CDMA方式はパケット通信料を値下げする。通話料は,いまは同一の国・地域でも両方式で異なるが,リニューアル以降は総じて値下げの方向で同じになる(関連記事)。

 海外での料金体系を確認したり端末の使いこなしを覚えたりするのが重要なのは,節約のためだけではない。「使い方を間違って高額請求される」「SIMカードだけ抜き取られて他の端末に差し込んで不正利用される(関連記事)」「サービスの使い方が分からない」などの事態を避けるためでもある。現地で東京に電話しようとして「+81-3-****-****の+はどうすれば出せるの?」となるのも困りものだ。

 つまり携帯電話事業者が配布する国際ローミングのパンフレットやWebサイトの説明,端末のマニュアルをよく読むことが大事なのだが,とはいえ忘れるのが人の常。個人的には,国際ローミングを開始するタイミングで,SMSやCメールの仕組みを活用して(各社とも,送信は有料だが受信は無料)その国・地域で必ず守るべき事項や基本的なことがらを待ち受け画面にポップアップ表示するような仕組みを端末に標準搭載すると,安心かつ便利に使えていいと思う。