日本の会計基準設定主体であるASBJ(企業会計基準委員会)は2014年3月24日、日本版IFRS(国際会計基準)、J-IFRSなどと呼ばれる「エンドースメントされたIFRS」の策定に向けて議論する「IFRSのエンドースメントに関する作業部会」の第10回会議を開催した。

 3月11日に開催した第9回会議と今回の第10回会議で、IFRSを削除/修正する可能性がある重要項目に関して議論。議論をより具体的にするため、次回会議で削除/修正文案を提示する方針を打ち出した。J-IFRSがいよいよ姿を現す公算が大きい。

検討すべき30項目を2グループに分類

 エンドースメントされたIFRSは、IFRSそのもの(ピュアIFRS)を構成する基準一つひとつを検討し、必要に応じて削除または修正したものを指す。金融庁が2013年6月19日に公表した報告書「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」でIFRS任意適用促進策の一つとして示した(関連記事:「強制適用の判断見送り、我が国に適したIFRS策定」、金融庁が報告書)。

 ASBJの作業部会は2014年秋の作業完了を目標として、第1回会議を2013年8月27日に開催(関連記事:「J-IFRS」の策定作業開始、IFRSと日本基準を比較し検討項目を洗い出し)。以後、月1回のペースで会議を実施している(関連記事:J-IFRS策定作業の2回目会議が開催、「従業員給付」や「のれん」に意見、関連記事:J-IFRSの策定作業3回目、連結の会計処理に議論集中、関連記事:J-IFRS策定の4回目会合開催、適用初年度の企業負担に指摘)。

 その後、第5回会議から洗い出した検討項目への対応方針を議論(関連記事:「今後の議論は難しくなる」、J-IFRS策定の会合6回目開催)。第8回会議で、検討した30項目を大きく「基本的な考え方に重要な差異があるもの」「実務上の困難さがあるもの」という二つのグループに分けた「全体的整理」の案を示した(関連記事:今後の焦点は「当期純利益」と「のれん」、J-IFRS策定の会合8回目開催)。

「のれん」「リサイクリング/当期純利益」が焦点に

 エンドースメントされたIFRSに関する議論は大きく、(1)基準を削除/修正するか、(2)教育文書やガイダンスのような補完的な文書を作成するか、から成る。中でも大きいのは(1)で、第8回会議までで、焦点となるのは「のれん」と「リサイクリング/当期純利益」となることがほぼ見えてきた。

 そこで第9回会議と第10回会議では、「のれんの非償却」(第8回会議での「全体的整理」の(9))、「資本性金融商品のOCI(その他包括利益)オプション」(同(1))、「退職給付に関する再測定部分」(同(2))の3項目について、「仮に該当する基準を削除/追加するとしたら、どのような論点があるか」という観点で議論を進めた。ASBJ側が案を出し、それについて委員が議論するという形を採った。