日本の会計基準設定主体であるASBJ(企業会計基準委員会)は2013年8月から、「日本版IFRS(国際会計基準)」あるいは「J-IFRS」などと呼ばれる会計基準の策定に向けた作業を続けている。検討会議はほぼ月1回のペースで開催しており、2014年3月に10回目を迎える予定だ。

 日本版IFRSやJ-IFRSは俗称であり、金融庁やASBJは「エンドースメントされたIFRS」と称している。ここで言うエンドースメントとは「自国基準へのIFRSの取り込み」のこと。エンドースメントされたIFRSとは、平たく言えば「日本のニーズに合わせて基準の一部を削除・修正したうえで、日本の会計基準として利用できるようにしたIFRS」を指す。

 IFRSが目指すのは、企業・組織の業績や価値を開示するための世界共通の“物差し”。本来なら、IFRSに何の手も加えずにそのまま使うのが望ましい。しかし、IFRSと日本の会計基準を比べると、「当期純利益」の概念や「のれん」の処理方法などが大きく異なる。このため、日本のIFRS導入方針を検討している金融庁企業会計審議会では、IFRS導入に関する「積極派」と「慎重派」との間で意見が対立し、議論がなかなかまとまらなかった。

 こうしたなか、ある意味「妥協の産物」として登場したのが日本版IFRSだ。日本側としては、IFRSの設定主体であるIASB(国際会計基準審議会)への意見発信をより積極化すると同時に、日本でのIFRS導入企業を増やしていきたいという希望がある。日本版IFRSでは、相矛盾しているようにも見えるこれらの要件を、可能な限り満たした会計基準を狙っている。

 日本版IFRSの完成は2014年秋を目標としている。それまでに越えるべきハードルは多く、完成したとしてもどれだけの企業が採用するかは未知数だ。それでもIFRS任意適用の条件緩和とともに、日本でのIFRS導入を加速する大きな要因となる可能性がある。