日本の会計基準を策定しているASBJ(企業会計基準委員会)は2013年10月8日、「IFRS(国際会計基準)のエンドースメントに関する作業部会」の第3回会議を開催。「連結」「解釈指針」「注記」の3分野について、検討が必要な項目を抽出する作業を実施した。

 作業部会は2013年8月に発足。IFRSの構成項目について日本企業が採用できるかどうかを検討したり、修正したりすることで、日本企業が採用しやすいIFRSである、通称「日本版IFRS(J-IFRS)」の策定を目指している。(関連記事:J-IFRS策定作業の2回目会議が開催、「従業員給付」や「のれん」に意見)。

 第3回の作業部会で議論の対象となったIFRSとIAS(IFRSの前進となる国際会計基準)の項目は、IFRS10(連結財務諸表)やIAS28(関連会社に対する投資)だ。加えてIFRIC(IFRSの解釈指針)やSIC(IASの解釈指針)、さらに開示する場合に「日本企業が実務的に対応が難しいと意見が寄せられた」(ASBJ)16項目について意見を交わした。

連結の範囲の特定や報告日の統一に差異

 今回の作業部会で「*(アスタリスク)」がついた項目は、連結処理に集中していた。*は「検討が必要な項目の候補」を意味し、IFRSと日本の会計基準を「基本的な考え方」「実務上の困難さ」「制度との関連」の観点で比較し、差異が大きいと考えられる場合に付けられる。

 今回の検討項目でIFRSとIASのうち「*」が付いたのは、IFRS10(連結財務諸表)の「事業会社(SPE以外)の連結の範囲」と「子会社の報告日が異なる場合の取り扱い」だ。「事業会社(SPE以外)の連結の範囲」には「実務上の困難さ」に*が、「子会社の報告日が異なる場合の取り扱い」には「実務上の困難さ」「制度との関連」の二つに*が付いた。

 「事業会社(SPE以外)の連結の範囲」では、連結の範囲について株式の比率といった数値基準などを設けている日本の会計基準に対し、IFRSは「実際に対象となる企業を親会社が支配しているかどうか」といった記述しか用意していない。この点について「IFRSを適用した際に、実務上判断するのは難しいのではないだろうか」との問題提起がASBJからなされた。

 これに対して企業側で実際に会計処理を担当している委員からは、「確かに経理担当者の作業量が増えるかもしれないが、実際に支配しているかどうかを経営陣は意識している。実態に沿った形で、連結の範囲が決められるようになるのではないか」といったIFRSの考え方を評価する意見が出た。

 一方で、親会社と子会社の決算日の統一をIFRSが求めている「子会社の報告日が異なる場合の取り扱い」では、「親会社だけでなく関連会社の負担が重くなるのではないか」といった指摘があった。現在の日本の会計基準では親会社と子会社の決算日が異なっていても、3カ月を超えない場合は問題がない。この3カ月の差を利用して、連結決算を処理している企業も多い。報告日に関するIFRSの規定は、日本企業が適用するのは「難しい可能性がある」との意見が出た。