「日本がIFRS(国際会計基準)の基準設定においてアジア・オセアニア地域のリーダーになるためにも、IASB(国際会計基準審議会)が設置を予定しているサテライトオフィスを東京に誘致する」。IFRS対応会議は2010年5月21日、記者懇談会を開催し、同会議での最新の検討課題を説明した。冒頭の発言はIFRS対応会議を務める萩原敏孝議長のもの。サテライトオフィスの誘致のほか、インドやシンガポール、中国といったアジア各国との情報交換の状況などを取り上げた。

 サテライトオフィスの誘致では、IFRSの設定主体であるIASBに対する日本の意見発信力の強化や、人や資金の流れが日本に集まることのメリットがあると説明。IASBへの働きかけのほか、アジア各国に東京への誘致の理解を求める活動をしていると明らかにした(関連記事:萩原議長インタビュー)。

 IASBは年内にもサテライトオフィスに関する方針を示す見通しだ。現状では日本のほかに、中国が香港を候補地として挙げているほか、シンガポールも名乗りを挙げているという。

 IFRS対応会議の島崎憲明国際対応委員会委員長は、「ここ10~20年の歴史を振り返ってみると、国際機関の物理的なオフィスが日本に設けられたことはない。だが日本は会計基準策定の歴史も古く、国際的に様々な貢献をしてきた自負がある。IASBのサテライトオフィスを誘致するメリットは大きい」と強調した。

 アジア・オセアニアとしてIASBへの発信力を強化するために、サテライトオフィスの誘致のほかにアジア・オセアニア地域との連携強化の方針を発表。2009年にオーストラリアを訪問したほか、6月には中国・北京を訪問するという。特にインドには2月と4月に訪問し、意見交換の場である「日印IFRSダイアローグ」を設けると発表した。

 日印IFRSダイアローグでは、IFRSのアダプション(強制適用)コンバージェンス(収れん)の課題を話し合い、相互協力の可能性を探る。島崎委員長は「日本とインドは置かれた状況や課題が似ている。お互いの資本市場への資金流入を促すためにも、話し合いの場を持つことが大切だと認識している」と説明する。

 IFRS対応会議は、IFRSの強制適用に向けた課題を検討している。ASBJ(企業会計基準委員会)や日本経済団体連合会(経団連)、東京証券取引所グループなどが参加する(関連記事)。