経営の屋台骨となるシステム開発を見事に成功させる例がある一方で、開発に失敗する案件も後を絶たない。成功の秘訣はどこにあるのか―。2013年のITpro経営分野のアクセスランキングは、そんなシステム開発の古くて新しい悩みに焦点を当てた記事が上位に並んだ。
トップとなった「『できない人』にいくら教えても『できる人』にならないのか」は、20年以上も前に「開発で一度も失敗したことがない人」に会った話から始まる。同じ筆者による「『赤字受注する人』にいくら教えても『黒字受注』はできないのか」も8位に登場。身も蓋もない言葉に脱力しながらも、何か解決策はないものかと期待を寄せているようだ。
しかし、現実はたやすくない。2位となった「971人の回答から見えたIT業界の悲しい組織風土の現実、半数が『同僚のことをよく知らない』」は、2013年2月に実施したアンケートの集計結果を紹介。読者から「うちの会社のことかと思った」「どこも同じ」といった反応が寄せられ、いまも大筋で変わらぬIT業界の悩みを映し出した。
ならば、せめて企業の組織や風土を変えるヒントはないものか。「『なぜ』が足りないのを、意識の低さのせいにするな」や、「言ってはいけない『言い訳』と『勘違いフレーズ』を言っていた」はともに、変革の端緒を求める読者の支持を集めた。
6位に登場する「なぜ”ダメなシステム”は無くならないのか」の連載記事は10位、14位にもランクイン。失敗と分かっていても後戻りできない悲痛な現場の先を見越して「リスク管理」一辺倒の大手ITベンダーの限界を指摘。改革の方向を提言する。
その地殻変動を示すものと受け取られたのだろうか。3位に入った「2014年春採用版 IT業界就職人気ランキング」では、コンサルティング会社やシステムインテグレータが順位を上げる一方、富士通やNECなど大手ITメーカーは前年よりも人気を落としたという。
とはいえ、かつての日本企業らしい組織の強さを取り戻せないものか。そんな“喪失感”とともに読まれた記事も多かった。7位の「スタートトゥデイが挑戦する6時間労働制『ろくじろう』、開始1年で何が変わったか」や、9位の「日本が忘れたもの、アップルが手に入れたもの」はいずれも、海外企業や国内企業の新しい試みに組織変革のヒントを求めている表れのようだ。
20位の「『大手メーカーが我々に追随』、世界17カ国で販売する約10人の家電メーカー」に対しても、新しい経営への渇望が見て取れる。
一方で、2013年はビッグデータへの注目が続いた。「IBM辞め起業したデータ分析の三銃士、顧客のビューカードは彼らの『CMO代行業』に期待」や、「ビッグデータ時代にプライバシーを保護する方策を考える--Suica事例は何が問題だったのか」は、データ活用への期待に加え、プライバシー保護の両立という課題を浮き彫りにした。
2014年は消費税の引き上げや日本版IFRS(国際会計基準)の登場に加え、19位に登場した「マイナンバー、その『複雑さ』の真相」など、経営に関わるシステム案件が目白押し。組織や人を大事にしながら、立ち向かう気概を持ちたいものだ。