今週、米MicrosoftがWebブラウザー「Internet Explorer(IE)10」でオンライン行動履歴の追跡拒否機能「Do Not Track」を初期状態で有効する方針を発表し、広告業界がそれに反発しているというニュースが報じられた。
Do Not Trackは、インターネットユーザーがオンライン行動の追跡を拒否できるようにするための機能である。米連邦取引委員会(FTC)が2010年12月に提案したもので、Webブラウザーや各種オンラインサービスに対して、特定データのみの収集を許可する使いやすい手段を提供することを求めている。オンライン行動履歴は、行動ターゲティング広告を目的に収集されることが多いが、FTCは情報収集の手法の透明性が不十分であり、プライバシー侵害の懸念があると指摘していた。
FTCの提案を受け、IE、米MozillaのFirefox、米GoogleのChromeなどの主要なWebブラウザー、さらにTwitterやYahoo!などがDo not Track機能の実装を進めている。
- Microsoft、「Windows 8」リリースプレビュー版を公開
- Microsoft、「IE9」に行動ターゲティング拒否機能を搭載
- Twitter、プライバシー保護機能「Do Not Track」を実装
- Yahoo!、個人情報管理手段「Do Not Track」機能を世界全体で提供へ
- 「Firefox 5」が日本語版含め正式版リリース、Android版も同時公開
- Google、Chrome向け行動追跡拒否機能を発表
FTCが2012年3月に発表したオンラインプライバシー保護に関する最終報告書は、これらの動きを踏まえて「民間企業においてDo Not Trackの導入が進んでいる」という見解を示している。
ただし、これらのDo Not Track機能は初期状態で無効になっており、有効とするにはユーザー自身が設定する必要がある(図1)。
Microsoftはこの方針を変更し、IE10では初期状態でDo Not Trackを有効にすると発表した。この方針転換に対して、インターネット広告の業界団体である米Digital Advertising Alliance(DAA)は、「Do Not Trackのサポートに合意していたが、デフォルトで有効にしない限りにおいてだった」と反発の姿勢を示している。
基本設定だけで行動履歴の追跡をすべて防ぐことは難しい
もっとも初期状態でDo Not Track機能が有効になっていたとしても、それだけで行動履歴の追跡を確実に防止できるわけではなさそうだ。Microsoftの「Do Not Track Test Page」というサイトでは、「基本設定だけで行動履歴を追跡しようとするWebサイトやコンテンツをすべて防ぐことはできない。IE9やIE8は行動履歴の追跡を防止する様々な手段を提供しているが、ユーザーはどの手段が適切なのかを検討する必要がある」という解説がある。
こうした問題を回避してDo Not Trackに実効性を持たせるためには、オンライン広告の業界団体であるDAAの協力が不可欠になる。Yahoo!の発表資料などによれば、DAAは行動ターゲティング広告の自主規制案を作成しているという。これに準拠したDo Not Track機能が有効になっていれば、少なくともDAA傘下の広告会社が広告を出すWebサイトでは、行動履歴を追跡しないはずだからだ。