「日本発 W-CDMA」の挫折

 最近,世界的に見ると日本の携帯電話メーカーの凋落(ちょうらく)が著しい。携帯電話はユビキタス時代の中核機器である。日本メーカーの国際競争力低下は他の国内産業にも大きな影響を及ぼす可能性が高い。総務省もこのまま放置してはいけないと重い腰を上げて議論を始めたが,混沌(こんとん)を極めているのが現状だ。一体,日本の携帯端末産業には何があったのか。この連載で,日本メーカーの国際競争力低下の真因を探ってみたい。


第1回:世界を席巻するはずだった「日本発W-CDMA」 

第2回:世界市場で蚊帳の外,日本携帯電話メーカーの失われた10年 

第3回:キャリア主導の産業構造が携帯メーカーを骨抜きに 

第4回:日本の携帯メーカーが独り立ちできなかった3つの理由 

第5回:成功から停滞へ,諸刃の剣だったキャリア主導の垂直統合構造 

第6回:韓国の携帯メーカーが世界で躍進できた理由 

第7回:構造改革できない官僚の限界,携帯産業に公正な競争環境を! 

最終回:ケータイが「メイドインジャパン」の誇りを取り戻す日 


王亭亭(Wang Tingting)
1991年に来日。1996年,京都大学工学部電気工学科卒業。1998年,京都大学大学院工学研究科電子通信専攻修士課程修了後,国内大手通信機器メーカーに入社。NTTドコモ向けW-CDMA基地局開発,3GPPにおける第3世代移動体通信規格の標準化活動に携わる。その間,通信技術に関する数個の特許を取得。2005年4月,一橋大学商学研究科MBAコースに入学。2007年3月に修了し,現在は一橋大学イノベーション研究センターでリサーチ・アシスタントを務める。