1960年代に米国のフィリップ・コトラー博士が提唱した「STP」はマーケティングで最も重要なフレームワークのひとつです。特にBtoBマーケティングは構成要素が多くバリューチェーンも長いので、各プロセスでの判断基準を「ぶらさない」ためにもSTPは極めて重要な意味を持っています。

 S:セグメンテーション(市場を細分化する)
 T:ターゲティング  (細分化した市場の中で最適な市場を選択する)
 P:ポジショニング  (選択した市場の中の企業や人に自らの立ち位置を説明・宣言する)

 この3つから構成されるフレームワークですが、すべてのプロセスで高度な情報収集能力や想像力、表現力などを求められるクリエイティブで知的なパズルなのです。

 マーケティングの醍醐味は、この中の「ターゲティング」、つまりある製品やサービス、技術などが「勝てる土俵を選ぶ・探す」という部分に集約されますが、そのためには前工程であり準備工程でもあるセグメンテーションをしっかり行う必要があります。そして実はこのセグメントする工程(セグメンテーション)こそ、もっとも想像力(イマジネーション)を必要とするのです。

 シンフォニーマーケティングでは、このセグメンテーションに「3Dセグメンテーション」という独自の手法を用いています。

 セグメンテーションにおける2D(二次元)とは、属性情報による分類を指します。業種、売上げ、利益、社員数、事業所数、所在地、などの企業情報による分類です。所属する部署や役職、専門分野などの個人の属性情報を使うケースもありますが、これも2Dです。もちろんこれらも重要な要素なのですが、これ以上にBtoBマーケティングで案件化と強い相関関係にあるのが「状態」です。我々はこの「状態」を3Dと呼んで、より重要な要素と位置づけています。

 製造業で使われる検査機器の例で説明しましょう。工場の製造ラインの最後には必ず検査工程があります。ここでしっかり検査しないと不良品を出荷することになり、それが原因で納品先のラインを止めたり、最終完成品がリコールになったりすれば大問題になるからです。しかし、工場の生産性を上げるためにこの検査工程がしばしばボトルネックになります。丁寧に検査をしようと思えば時間が掛かってしまい、「検査待ち」の製品が出荷できずに山になってしまうからです。この問題を解決するために「高度な画像解析技術を駆使して位置決めのスピードを速くした検査機器」が必要になる以下のような「状態」が出現します。

・製造ラインを高速化したいのに検査工程がボトルネックになって困っている。
・検査工程をプロセス分解してそれぞれの所要時間を計測したら、位置決めに最も時間が掛かっていることがわかった。
・不良品を出荷して後工程でリコールが起きてしまい検査の精度を大幅に引き上げなければならない。
・今までは数パーセントを抜き取り検査していたが、納品先からの要請で全品検査する必要に迫られ検査工程やその手法を見直すことになった。

 こうした状態にある企業が、この検査機器にとって最も魅力的なセグメントになります。2Dセグメントである企業や個人の属性情報に、こうした3Dセグメントをクロスさせることで、より案件化する可能性の高い魅力的な市場を見つけ出し分類することができます。そこをターゲットセグメント(勝てる土俵)と定義するのです。あとはそれをどう見つけ出すか、あるいは見つけてもらうか、をリード・ジェネレーションからナーチャリング、クオリフィケーションと設計していくことになります。

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