前回は「部分最適から抜け出すためには後工程から前工程を評価する仕組みに転換すること」が重要だと説明しました。そして、その時にもっとも難しいのは「定義」だと書きました。そこで今回は定義の話をしましょう。

 BtoBマーケティングは、リードから案件、案件から受注、受注からクロスセルと組織を越えて「つないで」いくことが求められます。その時に最も重要なポイントは「定義」なのです。

 例えば、新しいマーケティング手法を導入するためにある企業の会議に呼ばれたとします。情報システム部門とマーケティング部門の2人の室長と5つの事業部の部長、そして担当役員と経営企画のメンバーで会議が始まります。最先端のマーケティングソリューションを導入して、マーケティングからセールスまでを総合的に強化する事を目的に召集されたこの会議で、私はひとつの質問をします。

「御社における案件の定義を教えてください」

 すると以下のようなことが起こります。
「私の部では初訪で良い感触だったものを案件としています」
「いや見積もりを提出したもので統一したはずだが」
「それは今の販売管理システムの登録の定義では?」
「S-4がそうじゃなかったんですか?」
「そのプロセス管理は2年前に廃止されてもうどこも使ってませんよ」
「えっ・・・」
「私は部下に将来受注する可能性を感じるもの、と説明していますが・・・」
「何度も言いますが、それではシステムに乗りません」
「せめてサンプルの提出くらいにすべきでは?」
「こんなに商材が多いのに誰がサンプルの提出記録を管理するのですか?」
「えっサンプルって管理されてなかったの?」
「してませんよ」
「・・・・」
「うちの部では1年以内に受注できそうか、そうでないかで分けてますが?」
「受注できそうかを決めるのは誰なの?」
「営業が自分で決めてますが・・・」

 こうした解答の中に組織としてオーソライズされたものはありません。つまり定義は存在しないのです。このまま続けるとどこかで仲裁に入らないと、けんかになってしまうこともあります。

 そこで私は質問を変えます。

「案件に定義が無いことは解りました。後で一緒に定義しましょう。ところで御社には顧客の定義はありますか?」

 ここでも似たような結果となります。
「そりゃ、今現在取引がある企業でしょう?」
「でもうちの事業部の製品は買い替え期間が5~7年だから、6年前に購入した企業は顧客ではないというのはどうなんですかね?」
「メンテナンス契約をしてるだろう?」
「メンテナンス契約率は60%です。契約をしていない納品先は顧客ではないという事で良いですか?」
「そりゃあんまりだろ・・・」
「企業コードを持っていれば顧客なんじゃないですか?」
「うちの企業コードは消去のルールが無いので一度発番されればずっと残りますが・・・」
「そりゃ駄目だなぁ」

 これも定義はありません。

 さらに、「今回のマーケティング改革の目的は新規の獲得だと伺いましたが、ここで言う「新規」とは、新規顧客ですか?それとも新規案件ですか?」と質問するとまた大揉めになります。

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