前回は、BtoB企業でマーケティング活動の成果が出ない原因のひとつは、組織的な問題からマーケティング活動が部分最適になっている事だと説明しました。

 では、どうしたら部分最適から抜け出し、売上げに貢献する全体最適に再構築できるのでしょうか?私は2つの方法があると考えています。

 ひとつはマーケティングの先進国である米国の事例から学ぶ方法です。1990年代の後半から2000年にかけて、米国企業もマーケティング活動が部分最適に陥って困っていました。コミュニケーションチャネルもマーケティングプロセスも多様化し、さらに組織をまたいで複雑化する一方のマーケティング活動をどう評価したら良いか分からなかったのです。バラバラの組織がそれぞれの予算で運用していてはROIの算出が難しくなり、どのプロセスが最も売上げに貢献したのかも分かりませんから、予算配分の適正化も出来なかったのです。

 彼らはこの問題を、組織を再構築するという形で解決しました。それが2000年以降に米国で採用されるようになった「デマンド・ジェネレーション」という考え方であり、この考え方をベースに作られた組織です。

 「デマンド・ジェネレーション」は、日本語に訳すと「営業機会(案件)の創出」という意味になります。今の日本と同じようにバラバラの組織と予算で行われていた展示会やリスト購入、共催セミナーなどの「Lead Generation : 見込み客データの収集」、メールマガジンやWeb、チャット、情報誌、内見会などの「Lead Nurturing: 見込み客の啓蒙育成」、データ分析やニーズ確認のコールなどの「Lead Qualification: 見込み客の絞込み」 の業務を統合しCMO(チーフマーケティングオフィサー)の元で一体運用し、その年間のパフォーマンスを「ROMI(リターンオンマーケティングインベストメント:マーケティング投資回収率)で効果測定するように再構築したのです。

 もっともこのデマンド・ジェネレーションとその評価軸のROMIという組み合せは、マーケティング活動のパフォーマンスをあまりにもクリアに可視化してしまうので問題も起こしています。この指標が使われだした以降、米国企業のCMO在職期間が大幅に短くなり、2012年の時点では平均で2年を切ったというデータもあるくらいです。これは2年連続で目標値を達成できないと解雇され、逆に2年連続で達成すれば他社から引き抜かれる、という米国らしい理由ですが、今まで見えなかったものが「見える化」すると、こうした人材の流動化も起こるわけです。

 数年前に米国で開催されたマーケティングのカンファレンスに参加した時のことです。主催者のスピーチはこんな言葉で始まりました。「ここには企業内のマーケティング担当者も、マーケティングエージェンシーの人も、マーケティングシステムの開発会社の人も参加しています。競合もパートナーも混在しています。でもROMIのプレッシャーの下で毎日喘いでいるのは全員の共通点でしょう」

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