前回、日本企業は市場の拡大とその市場に提供する技術力の優位性をベースにして、常に「引き合い」を潤沢に持っており、これをある確率で受注すれば右肩上がりの成長線を描けた故にマーケティングの必要性が無く、それが理由でマーケティングの組織やナレッジが育たなかった、と書きました。
では、これからはマーケティングが必要だと気がついた企業はうまく行っているのでしょうか?実は多くの企業でマーケティングは売上げに貢献するに至っていないのです。
マーケティングが売上げに貢献しないワケ
「自分の会社はマーケティングがうまく行っていない」と考えている企業は多いと思いますし、この数年様々なマーケティング活動に投資を行い、組織を変更してマーケティングに取り組んできたが、なかなか成果が出ていないという企業も多いと思います。また、マーケティング部門と営業部門の仲が悪くて連携できずに困っているという話もよく聞きます。これらは多くの場合、「マーケティングが部分最適で、全体最適に設計されていない」ことが原因なのです。
では、まず「部分最適」を説明しましょう。BtoBマーケティングには多くのプロセスと活動があります。プロセスとは「リードデータを収集する」「整理する」「啓蒙・育成する」「絞り込む」などですが、そのための活動として展示会、Web、メールマガジン、セミナー、パートナー管理、ユーザー会、テレマーケティングなどがあります。部分最適とは、その中のあるひとつだけを改善しても、その活動が全体で連携していなければ成果が出ない、つまり「マーケティング活動が売上げには貢献できない」ということなのです。
しかし現実を見れば、企業には組織があり、予算はその組織に配分されます。展示会やコーポレイトサイトの運用、業界紙への広告などは広報・宣伝部、顧客データベースやマーケティングツール、CMSなどの導入は情報システム部、セミナーは製品事業部、訪問先を確保するためのテレマーケティングは営業本部などに予算が割り振られ、各部門がそれぞれの目標を設定し、それぞれ一生懸命に実行します。本来は工場の生産ラインのように前工程から後工程へと精緻に連携しなければならないものが、多くの企業でそうはなっていないのです。