前回、日本の製造業においては、現場の作業効率化だけではなく、経営管理視点から見た新しい生産管理システムの運用スタイルの確立が急務となっているという話をしました。今回はそうした観点からみた生産管理システムの導入目的に関して整理してみました。

管理目的は明確になっているか

 ある程度の規模の工場は、すでに何らかの生産管理システムを導入しているのが普通です。部品の手配作業や在庫管理作業を手作業で実施するのは難しいため、生産管理パッケージを使って生産管理システムを構築している企業も多いようです。

 しかし、こうした企業が実際にコンピュータシステムを使って「生産管理」を実施しているといえるかどうかは分かりません。単なる「生産指図システム」としてだけ運用している企業も数多くいます。指図伝票だけはコンピュータから出力されていますが、管理用のデータ表示画面は社内の誰も見ていないといった企業です。これでは宝の持ち腐れと言っても過言ではありません。こうした企業は、おそらく導入検討段階で管理目的を明確にせずに、パッケージベンダーに言われるままにシステム導入したのではないか、と推測されます。

 それでは生産管理システムを導入すると、どういった管理効果が得られるのでしょうか。最も一般的なものは、納期管理の精度向上です。製造業では製品の製造作業にある程度の時間(製造リードタイム)がかかります。また、製品の構成部品を手配するのにもある程度の時間(調達リードタイム)が必要です。そのため、顧客が必要とする時期(納期)に製品を納入するためには製造期間の調整が必要となります。生産管理システムを使ってその調整を行い、顧客の要求に応えていくというのが、生産管理システムの第一の役割です。

 ただし、いくら顧客の要求だからといって闇雲に製造したのでは生産業務全体に無駄があふれてしまいます。製造工程の稼働率がばらついたり、仕掛在庫や滞留在庫が急増したりしては、企業経営そのものが成り立ちません。そのため、生産管理システムには、各製造工程の稼働や進捗状況の管理、さらに製品・部品・仕掛品などの在庫の管理も求められます。これらが生産管理システムの第二の役割です。

 ただし、ここで問題なのは、計画通りに動かすことを目的として開発されたMRPシステムには、少しでも変更が生じると、これらの管理を十分に行えなくなる可能性があることです。このことがコンピュータによる管理の限界として問題視されることも多く、結果的に「当社の生産管理システムは役に立たない」といった評価につながりやすいという課題を持っています。

 また効果的な生産管理を実現するための方法は、必ずしも新しい生産管理システムを導入することだけが解決策とはいえない面もあります。例えば、図1のような問題を放置したままでいくら新しいシステムを作っても効果は出てきません。また、こうした状態を放置したままいくら魅力的な導入目的を設定しても、何の意味もありません。

図1●生産管理システム導入時に生じやすい業務問題の例
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