生産管理システムの導入作業や活用には現場の協力が欠かせません。連載の最後にあたって、生産管理システムに関する現場の関与に関する問題をまとめました。実は生産管理システムの導入において一番のハードルになりがちなのが、社内の生産管理関係者にどうやって協力してもらうかです。ある意味「敵は社内にあり」といっても過言ではありません。
マスターデータ、在庫データが整備されないとシステムは機能しない
生産管理システムに限らず、システムの導入作業は予定時期には本番開始できない傾向があります。しかも期間だけが超過ならまだしも、開発期間延長によって開発費用も膨れ上げってしまうこともあります。
こうした問題が起きる理由として、システムベンダーのプロジェクトマネジメントの甘さを問題にする方も多いでしょう。確かにそういったケースもありますが、それ以上の障害となりやすいのがユーザー側で実施する作業です。
代表的なユーザー側作業に、システム運用の基盤となるマスターデータの整備作業があります。
生産管理システムでは、部品マスターの整備が最も大変な作業です。何万点もある部品の名称から購入先(製造工程)、単価、購入ロット数、リードタイムを本番運用開始時期までに準備することが求められます。マスターデータの整備を専任で行う要員がアサインできればいいのですが、現業と兼務状態の要員にこうした大量の作業を時間通りにこなしてもらおうとすると、大抵無理が生じます。現行システムからの単純移行であっても、データの内容に関するチェック作業は欠かせませんので、それなりの工数が必要になります。
もうひとつ、よく問題になるのが在庫データの精度の問題です。この数字も間違っているとシステムはうまく機能しません。日頃の入荷、出荷作業をルール通りに行うことも大切ですが、現場作業員がいい加減な棚卸し作業をすると、生産管理システムから出るデータの信頼性が崩れてしまいます。
こうしたデータ整備の重要性に関しては、いくら口を酸っぱく言っても言い過ぎることはありません。基準となるマスターデータのメンテナンスが滞り、現場調整作業が多発することもあり得ますので、導入プロジェクトを任されたら、心してプロジェクトにとりかかるようにしてください。