「生産管理パッケージ導入の留意点」という連載では、日本企業がMRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)生産管理パッケージを使って生産管理システムを構築する際の課題を紹介しました。また、MRPは計画変更に対する柔軟な対応が苦手なことなどから、MRPを本格的に活用している日本企業は極めて限られ、大半の企業が部品展開と作業指示を中心としたシステムに留まっている、という話もしました(「第2回 生産管理パッケージの基本は部品展開と作業指示だ」参照)。

米国大企業はERP生産管理を活用していた

 本連載の執筆後に米国大手メーカー(C社)の米国工場を見に行く機会を得ました。C社はSAPのERPパッケージを用いて生産管理システムを構築しています。SAPのERPの生産管理モジュールといえば、MRPおよびMRPの発展形であるMRPII(Manufacturing Resource PlanningII:製造資源計画)をベースにした生産管理システムの集大成ともいえるシステムです。

 これまで、日本の多くの大企業が、MRPやMRPIIをベースにしたERP生産管理システムの導入にチャレンジしてきましたが、大幅なカスタマイズなしに、本格的に導入できた企業は限られます。

 一方、C社では日本企業とは異なり、ERPシステムを生産管理にうまく活用していました。今後は世界中に展開しているC社工場の生産管理システムを、SAPのERPパッケージに統一していく方針だそうです。

 なぜ、日本企業には難しいことが、米国企業では対応できるのか。その根底には、両者の生産管理に関する取り組み姿勢の違いがあります。そこで、今回は連載の番外編として、差し障りのない範囲でC社の生産管理の考え方を紹介したいと思います。

ERPパッケージに合わせるのではなくMRPIIに合わせる

 EPRパッケージの導入においては、「できるだけパッケージの機能に合わせてカスタマイズしないようにすることが大事だ」とよくいわれます。しかし、こと生産管理システムの構築においては、この言葉は少し違います。正しくは「MRPおよびMRPIIの理論原則に従った生産管理」を実践することが求められるということです。

 日本企業ではこの理論原則が忘れ去られることが多く、現場主導の何がなんだかわからない生産管理システムが構築されてしまいがちです。連載でも紹介したような、単なる「生産指示システム」としてしか活用されない生産管理システムも数多く存在します。

 MRP計算の基本は、各部品が必要とする時期にジャストインタイムで手に入るように計画し、手配することです。MRP計算が適切に実施されるためには、部品を必要とする時期(納期)と部品の調達リードタイムなどの数値データが整備されていなくてはなりません。

 計画通りに動かすことを目的として開発されたMRPシステムでは、こうした数値データに変更が生じると、十分な管理を行えなくなる可能性があります。これが長年にわたってMRPシステムの弱点とされた要因です。そして、このことを補うために進化してきたのがMRPIIの考え方です。

 C社ではこうした課題をクリアするために、MRPIIの原則に従って計画変更が極力発生しないような工夫を取り入れて、ERP生産管理システムを動かしています。以下にC社が実施している主な工夫を紹介したいと思います。

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