10:無線LANでもギガクラス通信「802.11ac」

 ついに無線LANでもギガクラスの通信が可能になる。IEEEが現在規格を策定中の「802.11ac」がそれだ。最大伝送速度の理論値は、実に6.9Gビット/秒に上る。既にドラフト2.0が固まり、11ac対応製品の開発が本格化している(図8)。

図8●ギガビット/秒クラスの802.11acが登場間近に
図8●ギガビット/秒クラスの802.11acが登場間近に
2012年1月にIEEEでドラフト2.0が出たことで、802.11acの動きが活発化している。日本でもバッファローが802.11acの技術を一部採用した製品を発表した。伝送速度(理論値)は最大約6.9Gビット/秒だが、当初は80MHz幅、3×3 MIMO、256QAMの構成の製品が多くなると見られ、その場合は最大約1.2Gビット/秒となる。

 11acの高速化は、11nで実現した技術を拡張することで実現している。ポイントとなるのは、(1)帯域幅の拡大、(2)さらなる多値化、(3)MIMO(Multiple Input Multiple Output)の拡張だ。

11nの技術をそれぞれ拡張し高速化

 まず帯域幅の拡張だが、11nでは最大40MHz幅だったところを、11acでは80MHz幅を必須とし、オプションで160MHz幅にも対応するようにした。80MHz幅システムの場合は11nに比べて2倍、160MHz幅システムなら約4.3倍高速化を図れる。

 続く多値化では、11nでは6ビット変調の64QAMだったところ、11acでは8ビット変調の256QAMとする。これによって約1.3倍の情報を載せられる。256QAMの変調となるとノイズの影響を受けやすく、電波状態が悪いところでは十分な効果を出せないことが予想される。ただ既に11ac技術を使った製品の試験をしているバッファローによると、家庭内など見通しの良い範囲内では、256QAMで十分通信が可能だという。

 最後のMIMOの拡張では、11acでは最大8×8MIMO構成に拡張した。11nは最大4×4MIMOの構成だったから、これにより11nと比べて約2倍の伝送速度が得られる。

 さらに11acでは、複数のユーザーでMIMOのストリームを協調できるマルチユーザーMIMOという仕組みもサポートする。8×8MIMOをサポートするとはいえ、携帯端末側に8本ものアンテナを実装するのは至難のワザだ。マルチユーザーMIMOを使えば、AP側と端末側で非対称となったMIMOのストリームを、複数の端末で分け合うことで、効率的な伝送を可能にする。

日本では2013年3月以降に登場

 80MHz幅が必須の11acでは、5GHz帯を利用することになる(図9)。2.4GHz帯では80MHz幅の帯域を確保できないためだ。現在5GHz帯では、11aや11n向けに19チャネル分用意されている。このうちの4チャネル分を重ねて80MHz幅システムとして利用することが想定される。

図9●802.11acで利用する5GHz帯の周波数配置
2.4GHz帯では干渉を避けるため同時利用できるのは3チャネル程度だが、5GHz帯は19チャネル分利用できる。11acでは帯域を重ねあわせた80MHz幅のシステムを利用できるようになる見込み。
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