新顔が大手と並び立つ

 SaaS部門は前回調査と同様に、3分野に分けて集計した。ERP(統合基幹業務システム)や人事、CRM(顧客関係管理)といった「汎用業務系」、グループウエアやWeb会議、eラーニング、セキュリティなどの「汎用情報系」、金融勘定系や電子カルテ、自治体向けサービスなどの「特定業種業務向け」である(関連記事「クラウドサービス総覧 汎用業務系SaaS編」「同 汎用情報系SaaS編」「同 特定業種業務向けSaaS編」)。

 ベストサービスは合計28サービスだ(表1)。汎用業務系では、上位に大きな変動はなかった。日立製作所、日本オラクル、ネットスイート、NTTコミュニケーションズ、日本マイクロソフト、セールスフォース・ドットコムの6サービスを選んだ。

表1●SaaS部門のベストサービス
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 この中ではネットスイートが「保守サポート」で高得点を得た。同社はデータのバックアップをほぼリアルタイムで実施し、取得データを1年以上保持する。

 汎用情報系のベストサービスは16サービス。ソフトバンクテレコムやブイキューブなどの常連に加えて、ソーシャルグループウェアと日本ユニシスなどが、新たにベストサービス入りした。

 ソーシャルグループウェアの「iQube」は、スケジュール共有、社内Wiki、社内ブログなどの機能を備える。利用料金は1人当たり月額500円から。ユーザー企業からの機能強化の要望を、同社のWebサイト上に公開して実現していくという、ユニークな開発スタイルを採用している。

 特定業種業務向けのベストサービスには、5社(6種類)のサービスを選定した。日本ユニシス、TDCソフトウェアエンジニアリング、インターネットイニシアティブ、日立、伊藤忠テクノソリューションズである。

SaaS 3部門の調査内容
 SaaS 3部門の調査項目は合計33。各項目は(1)サービス内容関連、(2)カスタマイズ関連、(3)料金関連、(4)契約関連、(5)信頼性関連、(6)保守サポート関連、(7)セキュリティ関連、(8)実績関連の8分野に分かれる。

 調査結果は「クラウドらしさ」と「既存システムからの移行のしやすさ」を重視して評価した。カスタマイズの自由度と手軽さ、柔軟で明確な料金体系、信頼性、サポートの手厚さ、データ保護への取り組み、実績、情報公開度などを重くみて配点した。

 全体で100点満点となるようにし、平均値が50、標準偏差が10となるように標準化して総合スコアを算出した。総合スコアが62.5以上だったサービスを「ベストサービス」として認定した。

【調査項目】
(1)サービス内容関連(3点)
 サービスの基本タイプ、サービスの種類、サービスの内容、利用可能なクライアント種別
(2)カスタマイズ関連(22点)
 画面のカスタマイズ方法、業務ロジックの設計・構築方法、データベースの設計・構築方法、他システムとの連携方法、導入支援やカスタマイズを実施する国内での認定パートナー企業数、業務パターンなどを設定済みのテンプレート数
(3)料金関連(7点)
 初期費用、期間以外の利用料金の変動要因、期間による課金単位
(4)契約関連(20点)
 利用開始時の申し込み方法、設定変更時の指示方法、最低契約期間、利用開始までの期間、設定変更にかかる期間
(5)信頼性関連(14点)
 保証するサービス稼働率、サービス停止とみなす処理途絶時間、計画停止の通知時期、障害・災害発生時の通知方法
(6)保守サポート関連(14点)
 サポート時間、サポート受け付け方法、データのバックアップ間隔、バックアップデータの保持期間、システムログの開示
(7)セキュリティ関連(12点)
 外部機関によるセキュリティ監査・認証、ユーザーデータの保証、契約終了時のデータ返却、国内データセンターの指定
(8)実績関連(8点)
 日本国内における法人ユーザー数、全世界における法人ユーザー数