米デルとの買収合戦で、米3PARのストレージを手に入れた米ヒューレット・パッカード。3PAR製品はクラウド環境での利用に強みを持つ。これまでにも買収でスケールアウトSANやスケールアウトNASを製品ラインナップに加えてきた。揃えた製品群をどう顧客に訴求するのか。米ヒューレット・パッカードStorageWorks Divisionのデビット・スコット上級副社長兼ゼネラルマネジャーに、今後のストレージ戦略を聞いた。

(聞き手は、高橋 秀和=日経コンピュータ


2011年のストレージ事業の戦略は。

写真●米ヒューレット・パッカードStorageWorks Divisionのデビット・スコット上級副社長兼ゼネラルマネジャー
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 新規顧客の開拓に力を入れる。3PARの買収で完成した、死角のない製品ポートフォリオを顧客に訴求する。現時点で外付けストレージ市場におけるシェアは11%に留まる。残りの89%の顧客をどこまで開拓できるかが2011年のテーマだ。

 顧客にアピールする点は大きく四つある。利便性が高いIPネットワークによる「IP SAN」、ファイルなどの「非構造化データ」、重複データを省いて容量効率を高める「重複除外」、ITシステム全体をサービスとして提供する「ITaaS(ITアズ・ア・サービス)」だ。

 IP SANは、2008年に買収した米レフトハンド・ネットワークスのiSCSI SANストレージ「HP StorageWorks P4000 G2 SAN」を前面に押し出す。非構造化データは、2009年に買収した米アイブリックスのスケールアウトNAS「HP StorageWorks X9000 Network Storage Systems」でカバーする。重複除外は自社開発のバックアップ向けストレージ「HP StorageWorks D2D Backup System」が主力だ。そしてITaaSのストレージ基盤を3PAR製品が担う。

買収したストレージ製品は、HPのサーバーとの部品共通化を進めている。今後の方向性は。

 プラットフォームの共通化は、HPの基本戦略「HP Converged Infrastructure」の一環として推進する。インフラの標準化を進めることで、導入コストと展開にかかる時間を削減していく。

 例えばiSCSI SANストレージの「HP StorageWorks P4000 G2 SAN」とスケールアウトNASの「HP StorageWorks X9000 Network Storage Systems」は、PCサーバーをハードウエアプラットフォームとして採用し、最終製品に仕上げている。 双方とも機能の多くをソフトウエアで実現する製品だ。

社内システムとパブリッククラウドを組み合わせて全体最適を図る「HP Hybrid Delivery」戦略を進めている。同戦略でストレージ製品群はどのような役割を果たすのか。

 現段階ではっきりとしたことは決まっていない。ただHPがHybrid Deliveryの構成要素として提供するIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)の「HP Enterprise Cloud Services-Compute」については3PAR製品が基盤になるだろう。

 3PAR製品はプライベートクラウドとパブリッククラウドに最適なストレージとして位置付けている。プライベートでは顧客のストレージ統合の基盤として、パブリッククラウドではマルチテナントで使うストレージ基盤として利用することになる。

最上位製品「HP StorageWorks P9500」は日立製作所のOEM製品だ。自社開発への切り替えや3PAR製品への統合の計画は。

 日立との関係は今後も強化、拡大する方向だ。確かに性能だけを見れば、両製品は重複する部分がある。しかし対象とする顧客層はまったく異なる。

 P9500は、主にオンプレミスで予測可能な負荷を処理するミッションクリティカル用途で実績がある。一方3PAR製品は、予測が難しい負荷とマルチテナントでの利用というクラウド環境を想定した、性格の違うミッションクリティカル用途に向けたものだ。この2種類のミッションクリティカル用途に応えられるのが、HPの製品ポートフォリオの強みだ。