2019年に入り、地方自治体が相次いで事務作業の自動化に取り組んでいる。実証実験段階の自治体が多いものの、これまでの取り組みには無かった特徴がある。PC作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)だけでなく、AI(人工知能)を組み込んだOCR(光学的文字認識)であるAI OCRを積極的に活用している点だ。
東京都多摩市は2019年3月から7月にかけて、住民税や児童手当などに関する業務を対象に自動化して効果が出るかどうかを試している。AI OCR技術を持つインテックやRPAベンダーのUiPathと共同で取り組む。
茨城県つくば市や横浜市など6市は2018年12月から2019年3月までNTTデータと共同でRPAとの連携を見据えつつ、AI OCRの効果を検証。手書き文字がどの程度正確に認識できるかを試した結果、読み取り対象全体の9割を正しく読み取れた。北海道でもAI OCRとRPAを組み合わせて業務の効率化を試みた。
これまで業務の自動化といえばRPAだけを検証する自治体が多かった。それがなぜAI OCRと組み合わせるようになったのか。その理由としてNTTデータの里田有毅ソーシャルビジネス統括部第二営業担当課長は自治体業務のペーパーレスの難しさを挙げる。「住民から申請などを受け付ける窓口業務には依然として紙文書が多い。職員が紙文書の内容を見てデータを入力する作業を効率化するには、RPAに加えて紙文書の内容を認識するAI OCRも必要だ」(里田氏)。
データ入力を伴う業務の効率化とペーパーレス化を狙い、タブレット端末を窓口に置いて住民に申請内容を入力してもらう自治体もある。だがタブレットに不慣れで入力できない住民は少なくないという。「紙による申請方法を無くすのは難しい」と横浜市の田中敦行政・情報マネジメント課長は明かす。こうした状況でも申請業務を効率化できそうな手段として、多くの自治体がAI OCRに注目しているわけだ。