「人工知能(AI)の技術者やデータサイエンティストなど高度な開発スキルを持ったエンジニアがとにかく足りない。日本語能力は自己紹介できる程度で構わないので外国人エンジニアを派遣してほしい」。外国人の高度人材を派遣するヒューマンリソシアには、2017年を境に日本の大手メーカーやSIerからこうした依頼が急増している。
各社が高度人材に求める日本語レベルは日本語検定でいえば4級程度。「自己紹介など、覚えた日本語のフレーズを話せるレベル」(ヒューマンリソシアの入江直樹経営戦略室バイスプレジデント)である。数年前までは、日本語をネイティブレベルで話せる日本語検定1級を持つ外国人エンジニアが求められていたという。
こうした変化の背景には高度人材不足の深刻化がある。経済産業省は2016年6月に発表した調査結果で、AIやビッグデータ、IoT(インターネット・オブ・シングズ)などの技術を持つ「先端IT人材」が2016年に既に1万5000人不足しており、2年後の2020年には不足数が4万8000人に膨らむと試算している。
ユーザー企業のデジタル案件が増えるなか、IT企業は「高度人材を雇えるならば日本語のレベルにぜいたくを言っていられない」ほど、台所事情が逼迫しているわけだ。事実、ヒューマンリソシアの入江氏は「名だたる大手IT企業でも高度人材の育成・確保が間に合っていない」と明かす。同社に相談に来るIT企業は「技術者不足で顧客の案件を断っている」「新卒採用の3分の1を海外留学生に頼っている」とこぼすという。
ヒューマンリソシアが本格的に高度人材の派遣サービスを始めたのは2年前の2016年だ。当初は外国人社員は20人程度だったが、想定以上の引き合いがあり、今では約10倍の約200人強まで拡大した。入江氏は「(高度人材に関する採用の)コネクションは30の国と地域に及ぶ」と話す。今後もニーズは高まると見て、同社は8カ月後の2019年3月までに500人、2020年3月までに1000人と倍々ゲームで外国人エンジニアを確保する考えだ。