「開発チームの多国籍化はメリットが多い。サービス開発の効率化やエンジニアのモチベーション向上にもつながる。メンバーのナレッジ共有や語学力アップにも効果がある」。2016年から積極的に外国人エンジニアの採用を進めているベンチャー企業、ウォーブンテクノロジーズの林鷹治代表取締役CEO(最高経営責任者)はこう話す。同社は最短5分でWebサイトを30カ国語以上に多言語化するサービス「WOVN.io(ウォーブンドットアイオー)」を開発・提供している。
同社は外国人エンジニアを募集するのにエンジニア向けQ&Aサイト「Stack OverFlow」などに求人情報を載せている。「毎月100人以上の応募があり、うち9割は日本在住の外国人エンジニアや日本に興味のある外国人エンジニアだ」(林CEO)。同社社員は現在、デザイナーや開発者の6割以上が外国人が占めるという。
なぜたくさんの応募が有るのか。ジェフリー・サンドフォード取締役CTO(最高技術責任者)は「海外では日本に興味があり、働くチャンスを待っているエンジニアは多い」と説明する。海外では自国以外で開発経験を積むことがキャリアアップにつながるとされているため、エンジニアはどんどん興味のある国に行く。
多国籍チームを生かす3つの工夫
ウォーブンはアジャイル開発の手法「スクラム(Scrum)」を使ってサービス開発に取り組んでいる。スクラムは開発の進捗状況を可視化したり、短い周期で開発と「振り返り」を繰り返す。素早く開発していくにはウォーターフォール型で求められる以上のコミュニケーションが必要になる。
文化も言語も異なる多国籍チームでどうコミュニケーションを高め、チーム内の会話を活性させるか。ウォーブンは様々なデジタルツール・アナログツールを試したが、ベストの使い勝手だったのがホワイトボードに付箋を貼り付けた「物理カンバン」の活用だったという。「課題や進捗がはっきりと、しかもひと目で分かる。言葉や文化を超えた分かりやすさが共通認識となって会話の第一歩になる」(林CEO)。
さらに生産性を高めるため、林CEOとサンドフォードCTOはかねて多国籍チームを生かす環境作りに注力してきた。試行錯誤の結果、効果的なポイントが3つ分かってきたという。「対面によるコミュニケーション」「フレキシブルな休暇取得」「公用語を設けない」――である。