Webサービスの本質的な意味は、ビジネス上の「価値」を、他のシステムからも再利用できる形で分離し、公開することにある--。米IBMでWebサービスの啓蒙活動を続けるRod A. Smith氏(Vice President, Emerging Technology, Software Group)に、エンタープライズ・ユーザーにとってのWebサービスの意味を聞いた。

--まず、ビジネス・ユーザーにとってのWebサービスの価値を教えてほしい。

Smith まず、Webサービスのもたらすメリットについて話そう。その実用的な価値は、ビジネスに適用できる、分散コンピューティング・モデルであることだ。企業は、短期に低コストで、他のビジネスと統合できるようになる。

顧客に対して先進技術を提供する「jStartプログラム」での実績では、開発コストを10から60%削減できることが示されている。また、25%のライフサイクル削減を達成できている。リコーテクノシステムでは、開発(期間)を33%削減できた。私達のWebサイトには、75種類のWebサービス事例が報告されている。

--Webサービスに関連して、WSDL(Web Services Description Language)を標準的なインタフェースとして使うことを推奨する理由は何か。

Smith WSDLの意義は、システムの機能を(他のシステムから呼び出せるように)公開したい会社にとって、特定の言語に依存することなく、他と統合することができることだ。

その前提となるのは、ビジネス上の「価値(Value)」となる部分を「機能(Function)」として切り出すこと。そしてメッセージングで結ぶこと。それも、言語から呼び出すのではなく、XMLによる分散メッセージングによって結ぶことなのだ。

まとめると、ビジネス上の価値を機能として分離し、Webサービスにカプセル化することが重要なのだ。

--では、そのようなビジネス上のプロセスを分析するための有効な手法は開発されているのか。

Smith BPEL4WS(Business Process Execution Language for Web Services)は過去9カ月に渡って強い関心と支持を集めてきた。やがて、EA(エンタープライズ・アーキテクチャ)の重要な要素としてWebサービスが位置づけられるようになるだろう。Webサービスのメリットが明らかな応用分野はワークフロー、ビジネス・フローだ。

私達の手元には、BPEL4WSのデモンストレーション・プログラムがある。サービス群をポータル・サーバーから扱えるようにしたものだ。これは、特別な知識を持たない学生他達が、10日ほどで構築したものだ。同じように、特別なスキルを持たない開発者にも、BPEL4WSは扱える技術となっていくだろう。

--そのようなアプリケーションを動かすには、より多くのコンピュータ資源が必要になるのだろうか?

Smith 答えはノーだ。Java技術がプログラミング・モデルの変化だったようにBPELも、モデルが変わる。だがJavaだから特別なコンピュータが必要でないように、BPEL4WSだから多くの資源が必要になるという訳ではない。

--BPEL4WSを扱う開発者は、どのような立場の人なのだろうか。

Smith BPELを扱う人たちは、プログラマというよりは、ドメイン・エクスパート(特定の分野の専門家)となるだろう。BPELによる開発を支援するツールについては、EclipseベースのツールをIBMが開発中だ。他の会社もツールを準備中と聞いている。

--具体的な製品でのBPELの採用状況は。

Smith IBM製品では、WebSpere 5.2以降のバージョンでBPELをサポートする。MicrosoftはBizTalkサーバーでサポートする。他に数社が検討中だ。

--BPELのような技術に対応するには、ユーザーは何をすればいいのか。

Smith あなたの会社のコアなビジネス・プロセスを、粒度が大きい(コース・グレインな)Webサービスとして分離しておくことだ。もしもWebサービスの数が1000種を越えるようだと、粒度が大きいとは言えないだろう。

--それによって、何が可能となるのか。

ドメイン・エクスパートが、短い時間で、Webサービス・ベースのアプリケーションを開発できるようになる。Webサービスは、目に見えるものではないが、自分たちのニーズをシンプルに実現できる技術となるのだ。

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