米Microsoft,米IBM,米BEA Systemsが米国時間8月9日に,Webサービス向けの新仕様「WS-Coordination」,「WS-Transaction」,「Business Process Execution Language for Web Services(BPEL4WS)」を発表した。「(三つの仕様は)Webサービス環境下で複数のビジネス・プロセスを確実に定義/作成/接続する方法を記述するためのもので,多種多様なシステムを使用しているパートナや顧客とのあいだや企業内部において,ビジネス・プロセスを統合し,相互接続を可能とする」(3社)

 ビジネス・プロセスでは,業務の流れ,業務を実行すべき順番,共有するデータの種類,ほかのパートナとの関係といったものを記述する。BPEL4WSにより,複数のWebサービスを使用し,パートナ間で標準的なメッセージを交換するようなビジネス・プロセスを記述できるようになる。またWS-CoordinationとWS-Transactionを使うと,利用するコンピューティング・インフラの種類に関わらず,複数のWebサービスを組み合わせて確実に処理を実行できる。

 たとえば,旅行会社がホテルや飛行機などの予約を行えるWebサービスを提供する場合,顧客やパートナとのあいだでビジネス・プロセスの連携を行う必要がある。顧客がBPEL4WS,WS-Coordination,WS-Transactionを使って旅行の日程などを入力すると,旅行会社のシステムは自動的に適切な航空会社やホテルとやり取りを行い,顧客の要求に合った処理を行う。予約をすべて取ることができれば,システムは顧客に対し,処理が完了したことを通知する。しかし,どれか一つの予約を取れなかった場合は,すでに取れているほかの予約を取り消す,といった処理を行う必要がある。

 BPEL4WS,WS-Coordination,WS-Transactionを組み合わせてビジネス・プロセスを記述することで,複数のWebサービスの組み合わせ,処理を実行する順番の記述,処理の完了または失敗に応じた動作の定義を指定することができ,柔軟性のあるビジネス・プロセスを実現できるという。

 各仕様の概要は以下の通り。

・WS-Coordination:
 複数のWebサービスを使用する場合,各Webサービスをほかのサービスと協調させて実行しなければならない。そのためWS-Coordinationは,Webサービス環境内で分散して実行される処理を連携するための標準的な仕組みを提供する。これにより開発者は,相互接続可能なWebサービスの実行を制御できるようになる。

・WS-Transaction:
 WS-Transactionを使うと,ビジネス・プロセス内において,特定のサービスが完了または失敗したかを監視できる。これにより,分散して存在する組織にまたがるWebサービス環境において,一貫性があり信頼できる処理の実行が可能になる。

・BPEL4WS:
 BPEL4WSはXMLベースのフロー言語で,ビジネス・プロセスをどのように組み合わせるかを定義できる。異なる技術を使用している環境同士の相互接続も可能なので,一つの企業内のやり取りだけでなく,パートナや顧客など他社とのあいだでもビジネス・プロセスを実行できる。ちなみにBPEL4WSは,IBM社の「Web Services Flow Language(WSFL)」と,Microsoft社の「XLANG」を組み合わせた仕様に相当する。

 なお米メディアの報道(InfoWorld)によると,この新仕様策定の取り組みに対し,米Sun Microsystemsは協力を求められなかったという。また,BEA社はSun社などと共同でWebサービス協調言語「Web Service Choreography Interface(WSCI)」を策定しているが,同日発表した新仕様にはWSCIの機能が含まれるのだという。

◎関連記事
米サン,BEA,インタリオ,独SAPがWebサービス協調言語「WSCI」を公開
Webサービス間のトランザクション管理を実現
Webサービス連携技術の開発相次ぐ
Webサービスで勝者になる
「Webサービスを『導入済み』または『導入予定』が8割」,米ボーランドの調査から
Webサービスの採用が進む,ビジネスにどう生かすかが課題に
WS-Iの参加企業が100社超に,ワーキング・グループを発足し2002年秋に成果物発表へ
米MSやIBMなど9社が,Webサービスの普及促進を図る業界団体「WS-I」を設立

[発表資料へ]