電気通信事業者協会(TCA)が4月7日,2005年3月末の携帯電話契約数を公表した(記事詳細)。年度末となる3月は毎年,携帯電話の新規契約数が急増する。2005年3月も携帯電話全体で約91万の純増。2月末が約37万増,1月末が約29万増だったのに比べるとその勢いが分かろうというものだ。


 そしてNTTドコモの第3世代携帯電話「FOMA」は1カ月で約126万もの純増を見せた。FOMAのサービス開始以来初の単月100万加入の大台を突破。FOMAのトータルの契約者数は1150万となり,2004年度の目標値であった1060万契約をクリアした(記事詳細)。


 2005年3月はNTTドコモのPDC契約が約78万の純減しているので,PDCからFOMAへの買い替えが進んだともいえる。それでもFOMAへのユーザー移行に苦しんでいた2004年2月とは隔世の感がある(記事詳細)。


 2003年末,日経コミュニケーションは編集長インタビューとしてNTTドコモの立川敬二社長(当時)に取材した。この場で出た,当時伸び悩むFOMAの加入者数に対する質問に立川社長はこう答えている。「地球の歴史から見たら,(FOMAの)1年や2年の遅れなど微々たるもの」--。


 実はインタビューの席上,立川社長は「急速にFOMAに移行してもらってもちょっと困る」とも語っていた。これはPDC網の設備償却を見込んでいたため。2003年まで投資したPDCネットワークを,投資分を回収しながら使い続ける必要があるのだ。「2006年にFOMAとPDCのユーザーが半々になるように進めている」というもくろみも示した。2004年のFOMA純増数は約700万加入。このペースでいけば確かに2006年にFOMAとPDCのユーザー数が入れ替わる計算だ。


 とはいえ,NTTドコモのPDCユーザーがそのままFOMA携帯電話に乗り換えるとは限らない。2006年に利用可能となる新たな携帯電話用周波数1.7GHz帯の割り当てを巡って,総務省の検討が進んでいる(記事詳細)。この周波数帯で,携帯電話サービスに新規参入する事業者が現れると,携帯電話サービスのシェアに少なからず影響が出るだろう。さらに2006年に「番号ポータビリティ」制度が実施されると,ユーザーの携帯電話事業者切り替えの障壁がなくなる。


 2006年になったときには,立川前社長の思惑通りにことが進んでいるのか。現在は宇宙航空研究開発機構の理事長である立川氏には「地球の歴史から見たら,携帯電話のシェアなど微々たるもの」と笑い飛ばされるのかも知れないが。

(松本 敏明=日経コミュニケーション 副編集長)