米Hewlett-Packard(HP)上級フェローのAlan Kay氏が,2004年度の京都賞先端技術部門を受賞した。HP社が米国時間6月11日に明らかにしたもの。1960年代から1970年代にかけて同氏が行った,現在のパーソナル・コンピュータの基礎となる研究が評価されたという。

 京都賞は,京セラの創業者である稲盛和夫が設立した稲盛財団が運営する国際的な賞(稲盛財団のWebサイト)。1985年に開始され,2004年度は20回目にあたる。先端技術部門,基礎科学部門,思想・芸術部門の3部門に分かれており,該当分野の発展に貢献した個人やグループを部門ごとに毎年1名(1グループ)選ぶ。受賞者には賞金5000万円,20カラットの金メダル,ディプロマを贈呈する。Kay氏以外の2004年度の受賞者は,基礎科学部門がAlfred George Knudson, Jr.氏(ヒト発がん機構におけるがん抑制遺伝子理論を確立した先駆的業績),思想・芸術部門がJurgen Habermas氏(コミュニケーション行為論,討議倫理学など,社会哲学理論の構築および公共性に根ざした理想社会実現への実践的活動)。

 Kay氏の受賞理由は,「パーソナル・コンピュータの概念の創出と実現への貢献」。同氏は1960年代に初期のパーソナル・コンピュータの設計に取り組んだ研究者の1人。動的オブジェクト指向プログラミングの考案者でもあり,ウィンドウが重なり合うGUIを発明したほか,Alto用ソフトウエアの設計にも携わった。子供の教育に関心が高く,プログラミング言語Smalltalkを使って小学生などにコンピュータ処理の概念を教える活動にも取り組んでいる。

 なおKay氏は,2004年に米技術アカデミー(NAE)のDraper賞と米計算機学会(ACM)のTuring賞も受賞している。「両賞は,技術/計算機科学界のノーベル賞といえる」(HP社)

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